立命館大学情報理工学部プロジェクト団体 ゲーム&CG部門 RiG++

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ごきげんよう。4日目を担当する妹チルに代わり、八雲紫です。
折角好きなことが書けるならと、急遽巫女たちを集めて幻想郷について話をさせました。
すべてを記憶する能力をもつ九代目御阿礼の子『稗田 阿求』に記録させていますので、
会話の内容は一語一句違わず記載されています。
ただし、いくらか私が編纂いたしましたところもございます。
現に住まう皆様にわかりやすいよう致しましたつもりですので、ご了承を。
どうぞ私が愛してやまないこの幻想郷のことを頭の片隅にでも残してくださいな。




はじめに




 霊夢

はい、こんにちは。【楽園の巫女】<博麗 霊夢>よ

 菫子

【深秘を曝け! 秘封倶楽部初代会長】<宇佐見 菫子>です

 霊夢

で、なんだっけ?幻想郷について教えてほしいんだっけ?

 菫子

そうそう、レイムっちなら色々知ってそうだから。    
この際幻想郷のことをしっかり知っておこうと思って

 霊夢

面倒ねえ…まあ、暇してたからいいわ

 阿求

あ、書記は私【九代目のサヴァン】こと<稗田 阿求>が務めます

 菫子

それじゃ各位自己紹介も済んだところで…    
教えてもらおっかな。幻想郷について!






幻想郷とは




 菫子

そもそも幻想郷ってなんなの?    
どういう場所なのか知りたいな

 霊夢

あんた調べたんじゃないの?

 菫子

勘違いしてる部分もあるかもしれないじゃない

 霊夢

まあ、いいか

 霊夢

幻想郷っていうのはここのこと同人ゲーム『東方project』シリーズに登場する架空の地名よ(*編:八雲)

 霊夢

ここには人の世で幻想になった存在…    
例えば妖精妖怪なんかが集まるわ

 菫子

人の世って…普段私がいる世界のこと?東京とかがある

 霊夢

そう。私たちは『外の世界』と呼んでいるわ。    
その辺の話はまた後で話すわね

 菫子

幻想になった存在が集まるって言ったけど、それってどういうこと?

 霊夢

簡単に言うと忘れ去られるってことよ。    
人々から忘れられて、その存在が霧より曖昧になったら    
ここ幻想郷へ誘われるわ

 菫子

忘れ去られる…悲しい話ね

 霊夢

そうでもないわよ。    
ここにいるやつらはみんな能天気だからねぇ

 阿求

霊夢さん、外の世界で知名度があってここに来た人を例としてあげてほしいです

 霊夢

んー…そうねぇ、神子とか、輝夜とかかしら?

 菫子

2人とも知ってるわ。    
<豊聡耳 神子>は聖徳太子、<蓬莱山 輝夜>はかぐや姫ね

 菫子

…ん?この2人、忘れられてはいないような

 霊夢

忘れられるっていうのはわかりやすく言っただけだからね。    
みんなに幻想である、と思われたら幻想になるのよ

 菫子

ふーん…?    
なんにしても、外の世界の人々によって幻想郷入りが決まるのね

幻想郷の地理

 菫子

幻想郷に入る仕組みはわかったわ。    
次は幻想郷の地理について教えてもらおうかな

 霊夢

地理…地理ねえ。地理と言われても

 阿求

霊夢さん、これは自分の神社を宣伝するチャンスなのでは?

 霊夢

! なるほど、それじゃあ気合入れていくわよ

 菫子

話が終わらなくなるからお手柔らかに…



博麗神社


 霊夢

まずは幻想郷の要である我が神社、<博麗神社>についてよ。    
この神社は『外の世界』と『幻想郷』の境界に位置しているわ。

 霊夢

周囲には私が管理している<博麗大結界>と、その外側に<幻と実体の境界>が張られていて、    
幻想の存在を保護しているわ

 菫子

博麗大結界…私が破壊しかけたアレね

 霊夢

そうよ。本当にとんでもないことをしてくれたわね。    
アレ、私たちにとっては本当に大切なのよ

 菫子

私の研究によると、<博麗大結界>とは『常識の結界』のことね。    
外の世界と幻想郷の『常識』と『非常識』とを分け、    
外の世界の『常識』を幻想郷の『非常識』に、    
外の世界の『非常識』を幻想郷の『常識』の側に置くというもの…

 菫子

 あってる?

 霊夢

憎たらしいほど大正解よ。    
…ま、大結界の話はこの辺りにしておきましょう。    
肝心の博麗神社についての話が全然進んでいないわ

 菫子

 博麗神社についてって言っても…    
人間のお客さんが来なくてお金がない貧乏妖怪神社ってだけじゃないの?

 霊夢

なんだぁ…?アンタ…

 菫子

 あわわ、レイムっちがキレた!



人間の里


 阿求

落ち着きました?    
続きをお願いします

 霊夢

はぁ…はいはい、次は人間の里かしらねえ

 菫子

 人間が住んでいる場所ね。幻想郷で人間が集まっているところってここだけ?

 霊夢

そんなことはないわよ。他にも点在しているわ。    
ただ、一番大きいのはここね

 阿求

私が住んでいるのもここです

 菫子

へえ…    
でもここって人間ばっかりが集まっているんでしょ?    
妖怪の的になったりしないのかしら

 霊夢

その点については大丈夫。    
実は幻想郷に於いては人間と妖怪は持ちつ持たれつの関係にあるの

 菫子

 どういうこと? 普通妖怪って人間を襲う存在よね

 霊夢

んーそうねぇ。    
妖怪にとって必要なもの…食料ってなんだと思う?

 菫子

 だから…人間でしょ?人肉

 霊夢

半分だけ正解。実はちょっと違うわ

 霊夢

妖怪にとって本当に大切なものはもっと精神的なものなのよ。    
ずばり、『人間の恐怖心』

 菫子

 恐怖心…?そんなものが大事なの?

 霊夢

私たち人間からしたら『そんなもの』って感じだけど、妖怪からしたら切実なのよ。    
妖怪は人間を恐怖させるために存在する。    
その使命を果たせなくなった瞬間、その妖怪は存在意義を失って消滅するのよ

 菫子

 消滅って…幻想郷に行くの?

 霊夢

違う。幻想郷に行ったあとの話よ。    
忘れられて幻想郷にたどり着いて、そこでも人間の恐怖心が得られなくなった妖怪は     文字通り存在ごと『消滅』する

 菫子

 ひえ…なんか可哀そうね妖怪って

 霊夢

同情しちゃダメよ。消滅しないために人間を襲ってくるんだから

 菫子

 ああ、なるほど…    
って、ん?じゃあやっぱり人間の里って危険なんじゃ…

 霊夢

妖怪が好き勝手人間を襲って人間が幻想郷からいなくなったら誰が妖怪に恐怖心を抱くのよ

 菫子

 ああ、そういうこと!    
だから人間の里はある意味で安全なのね

 霊夢

管理者も多いからね。    
半妖の<上白沢 慧音>とか、天狗とか、主に妖怪だけど

 菫子

 人間を脅かす存在であるはずの妖怪が人間を守っているだなんて、なんか変な感じ

 霊夢

幻想郷はかくも危うく絶妙なバランスの上に成り立っているのよ



命蓮寺


 菫子

 そういえば人間の里のすぐ近くにお寺があるわよね。    
あそこ…<命蓮寺>だったかしら?

 霊夢

そうよ。聖人である<聖 白蓮>が中心となって    
人間、妖怪分け隔てなく受け入れているみたいね

 菫子

 平等なのねえ。人里近くで妖怪の味方をするって、危うい気もするけれど

 霊夢

いまのところは問題は起こっていないみたいね。    
白蓮の指導が功を奏しているのかしら?

 菫子

 ふぅん。幻想郷にしては珍しくまともな施設ね。    
みんなに好かれていそう

 霊夢

私は好きじゃないけどね

 菫子

 えっ。どうして?

 霊夢

商売敵だからよ

 菫子

 商売敵?

 霊夢

私の神社は『神道』でしょ?でも命蓮寺は『仏教』。    
宗教が違うもの同士で信者の取り合いをしているから商売敵

 菫子

 商売敵って…宗教って随分俗っぽいのねえ

 霊夢

神社も寺も廟も、結局お金がないとやっていけないからね

 菫子

 そういうものかしら。

 菫子

 …ん?廟ってなあに?

 霊夢

幻想郷にはもう1つ主な宗教があるのよ。
その中心となっているのがその廟…つまりお墓



神霊廟


 霊夢

幻想郷での主な宗教は3つ。『神道』『仏教』『道教』よ

 菫子

 道教?こっちの…外の世界ではあまりメジャーな宗教ではないわね

 霊夢

その中心となっているのが<神霊廟>よ。    
仙界にあるわ

 菫子

 仙界ってどこ?

 霊夢

この世のものではないわ。    
神霊廟の主である<豊聡耳 神子>の仙力によって創られた世界よ

 菫子

 ああ、さっき言った聖徳太子ね。
聖徳太子って仏教の人だったと思うけど

 霊夢

神子は仏教を利用して復活しようと企んでいたみたいよ。    
仏教が消えて人々が救いを求めたとき自らが現れるように術式を組んで…

 菫子

 でも仏教って今でも続いているわよね。どうやって復活したの?

 霊夢

そうね。そこが神子の誤算だったみたい。    
神子が復活したのは命蓮寺の建った場所に関係しているのよ

 菫子

 命蓮寺の場所?人里の近くがなにか

 霊夢

あそこは人里の近くってだけじゃないの。    
もともとあの下には<夢殿大祀廟>って廟があったのよ

 菫子

 ははあ、もともとはそこにいたのね

 霊夢

命蓮寺が、つまり商売敵が上に建ったことで刺激されて復活したらしいわ

 菫子

 ライバル意識で復活したの?    
やっぱ宗教って思っていたより人間臭いわねぇ



魔法の森


 菫子

 じゃ、宗教周りのことはわかったし、    
次は魔法の森について教えてほしいわ

 霊夢

魔法の森ねえ。
あそこについては私より詳しいやつがいるんだけど…

 魔理沙

呼んだか?

 霊夢

うわっ!なにいきなり現れてるのよ!

 阿求

 あっやっと来ましたね。遅刻ですよ

 魔理沙

悪い悪い。魔法の実験に失敗してな。
片づけに手間取っちまった

 菫子

 なんだ、もともと呼んでたのね

 魔理沙

そういうこった。    
んで、魔法の森についてだったよな?

 霊夢

そうね。    
ちょうどいいタイミングで来たし、解説は魔理沙にお願いするわ

 魔理沙

任せておきな

 阿求

 魔理沙さん、自己紹介自己紹介

 魔理沙

おっとと、【普通の魔法使い】でおなじみ<霧雨 魔理沙>だ    
んじゃ、喋るぜ

 魔理沙

魔法の森は瘴気が漂う人外の森だ。    
私が住んでいる場所だが、私以外に人間は滅多に見ないな

 霊夢

そもそも普通の人間が入ったら大変なことになるからね

 魔理沙

ああ。あそこには『物体を変化させる力』があるんだ

 菫子

 物体を変化させる力?

 魔理沙

朝顔が自律運動したり、木の上にスイカが成ったりな。    
他にも地蔵に生命が吹き込まれたりもする。    
だからまともな人間があそこに入るとどうなるかわからないぜ

 菫子

 ひええ。そんなに怖いところだったの?    
あそこ、何度か行ったことがあるんだけど…

 魔理沙

ああ、入口にある香霖堂だろ?

 菫子

 そうそう、<森近 霖之助>さんが経営しているあのよくわからないお店

 魔理沙

香霖堂は主に<無縁塚>に流れ着いた物を展示している店だ。    
一応金を払えば買えるものもあるが…店主の気分次第だな

 菫子

 無縁塚って?

 魔理沙

魔法の森の奥地から繋がる場所だ。    
縁者のいない者が弔われる共同墓地で、生と死の境界が曖昧なんだ。    
それゆえに色々なところと繋がっていて、たまに外の世界の物が流れ着いていたりする

 菫子

 へえ…幻想郷っていたるところで境界が綻んでいるのね   
(博麗大結界が壊れかけたのは貴女のせいですけどね*編:紫)

 霊夢

まあね…    
それもこれも、あいつがサボるからよ。    
あの時だって、冥界と繋がっちゃって…



冥界


 菫子

 あのとき?

 阿求

ちょっと、冥界の話は台本ではまだですよ

 魔理沙

まあいいじゃないか。どうせいつか解説するんだろう?

 阿求

うーん…まあ、いいか

 菫子

 では改めて…あの時って?あいつって誰なの?レイムっち

 霊夢

<春雪異変>の時よ。春なのにずっと雪が降ってて、春が訪れなかったの。    
問題はそのあと。幽霊が蔓延っちゃって…    
それもこれも、<八雲 紫>が結界の管理をサボるからよ

 魔理沙

あのときは大変だったなー

 霊夢

本来、幻想郷と冥界は<幽明結界>によって隔てられているの。   
生者の国である幻想郷と死者の国である冥界が交わっちゃ困るからね。   
それなのに紫がいつまで経っても壊れた結界を直さないから…

 菫子

 わあ、なんかちょっと楽しそうだけど…   
その結界が壊れたのも紫さんのせいなの?

 霊夢

…そ、それはー

 魔理沙

こいつが壊した

 菫子

 え?

 霊夢

だってー、寒いし、目的地の冥界までの道が結界で塞がれてたらそりゃ…

 菫子

 えぇ…

 霊夢

あーもう、さっさと冥界の解説して次行くわよ!

 魔理沙

ごまかしたな…

 霊夢

さっきも言ったけど、冥界は死者の国よ。   
住んでいるのは<西行寺 幽々子>と<魂魄 妖夢>ね。   
この2人は白玉楼ってところに住んで、幽霊を統治しているみたい

 魔理沙

統治しているのは幽々子だけだがな。    
妖夢は主に幽々子の世話係だ。剣術を指南したり、庭を整備したり

 菫子

 ははあ、妖怪とか神がいる幻想郷に幽霊だけ少ない理由はそれだったのね。    
みんな冥界で管理されてるから…

 魔理沙

見つけにくいだけで普通にいるがな。結界は緩いまま放置されてるし。    
岩の下とか見てみると意外と見つかるぜ

 菫子

 なんか虫みたい…



紅魔館


 阿求

それでは次に行きましょうか

 魔理沙

んじゃ説明するぜ。    
紅魔館は<霧の湖>に隣接した吸血鬼の館だ。    
菫子も知ってるだろ?レミリアのこと

 阿求

魔理沙さん、公式の文書に残りますのでフルネームでお願いします

 魔理沙

おっと、<レミリア・スカーレット>だな。    
館の主の吸血鬼だ

 菫子

 知ってるわ。確かスペルカードルールが制定されて最初に異変を起こした人物だとか

 魔理沙

そうそう。スペルカードルール制定については…

 阿求

あとでですね

 魔理沙

おっけー。    
んで、内部についてだが…    
これが驚くほど広くてな。見た目の何十倍もある

 霊夢

そういえばそうだったわね。   
いくら飛んでも終わりが見えなかったわ

 菫子

 なんでそんなことが起こるの?

 魔理沙

紅魔館のメイドに時間を操れるやつがいるんだ

 菫子

 あっ、知ってるわ。   
<十六夜 咲夜>ね

 魔理沙

この辺は私もよくわかってないんだが、    
時間を操るってことは空間を操ることと同義で…    
だから広くできる、とかわけわからんことを言っていたな

 菫子

 ああ、なるほどね。   
時間の操り方によっては移動にかかる時間が2倍になることと   
空間が2倍の大きさになることは同義なのかしらね

 霊夢

…よくわかんないけど、菫子がわかっているならいいか

 魔理沙

ま、そんな感じででかくなってるから図書館も物凄く大きいんだ

 霊夢

地下にあるあの図書館?

 魔理沙

そう、<パチュリー・ノーレッジ>が管理しているあそこだ。    
私はよくここから本を借りている

 菫子

 へえ、面白いわね。   
そういえばあそこ、主の吸血鬼に妹がいるって聞いたことがあるのだけれど

 魔理沙

<フランドール・スカーレット>のことか?    
あいつは気が触れているからな。基本的に館に軟禁されているみたいだぞ

 菫子

 ふぅん…吸血鬼事情も大変なのねえ



迷いの竹林・永遠亭


 魔理沙

あと気になるところあるか?

 菫子

 そうねぇ…迷いの竹林かしら。あの人が住んでいるらしいし

 魔理沙

あの人?妹紅か?

 菫子

 そうそう

 霊夢

<藤原 妹紅>は迷いの竹林の案内人ね。    
迷いの竹林は名前通り迷う竹林よ

 菫子

 迷う竹林って…
目印かなにか置いておいたら簡単に抜けられそうなものだけどねえ

 魔理沙

あそこはそういう類ではないんだ

 霊夢

迷いの竹林には『呪い』がかかっているのよ。   
どんな者も抜け出すことができない、絶対の迷いの呪いが

 菫子

 ひええ。なるほど、だから案内人が必要なのね

 魔理沙

あいつは趣味で案内しているだけみたいだがな

 霊夢

他にも『幸運を呼ぶ兎』に会うと出られるみたいね

 菫子

 幸運を呼ぶ兎…<因幡 てゐ>のことかしら?

 霊夢

そう。どうしようもない悪戯兎ね

 魔理沙

その割に会うと必ず幸運になるっていうんだから面白いよな。    
悪戯されるのに幸運になるってどういうことだ

 霊夢

この兎の住処はここ迷いの竹林と、<永遠亭>みたいね

 菫子

 永遠亭…お医者さんだっけ?

 魔理沙

そうだな。幻想郷一の名医、<八意 永琳>が住んでる

 霊夢

永遠亭は迷いの竹林の中にあるわ。   
案内人がいないと到底たどり着けないわね

 菫子

 急患にはちょっと不便な場所ね

 魔理沙

ただ、辿り着きさえすればどんな病気でもたちまちに治るからな。    
しかも値段も良心的だ

 菫子

 どんな病気でも?   
なんか危ない薬使ってそう…

 魔理沙

危ないかどうかまではわからんが…    
永琳は人間ではないからな。未知の技術であらゆる病気に効く薬を作れるらしいぜ

 菫子

 また妖怪なのね。幻想郷の人間って本当に妖怪と密接なのねえ

 霊夢

永琳は妖怪じゃないわよ。   
月の都に住んでいる月の民

 菫子

 月の民?月の都だって?



月の都


 魔理沙

ああ。月にもここ幻想郷と同じ立ち位置の世界が存在するんだ。    
それが<月の都>

 菫子

 月の都…なんだか聞いたことがある響きね。   
夢の中で聞いたような…

 霊夢

一度だけだけど行ったことがあるわね。   
あれは確か…第二次月面戦争のときに

 菫子

 月面戦争!?幻想郷って意外と大規模なことまでやっているのね

 魔理沙

月面戦争って言ったってやったことは酒を盗んだだけだがな

 霊夢

私たちは紫の計画に乗せられただけ。   
ほんと、腹立つわ

 魔理沙

まあ、いいじゃないか。    
月の民との闘いはなかなか楽しかったしな

 菫子

 月の民って強いの?未知の技術って言ってたから幻想郷より技術は進んでそうよね

 魔理沙

強いってもんじゃないぜ。    
もうレベルが違うって感じだったな

 霊夢

一応私も巫女だからできるけど、
戦った<綿月 依姫>は私より自由に神を使役していたわね

 魔理沙

レミリアも瞬殺だったもんな

 菫子

 吸血鬼が瞬殺って、にわかには信じがたいわね

 霊夢

あいつ、日光が弱点だからね。   
『天照大御神』を使役されたらもうなすすべないわ

 菫子

 はー…なんかすごい人たちねえ、月の民って

 魔理沙

永遠亭にいるやつらは大半がその月の民だ

 霊夢

<蓬莱山 輝夜>も月の民、<鈴仙・優曇華院・イナバ>も月の兎よ

 菫子

 かぐや姫…そういえば物語でも月の民だったわ。   
もしかして輝夜って戦ったら物凄く強い?

 魔理沙

強いぜ

 霊夢

金閣寺の一枚天井を投げてくる程度には力もあるわ

 菫子

 なんかかぐや姫のイメージ崩れるなあ…



夢の世界


 菫子

 その月の都って、どうやっていくの?   
月にあるなら幻想郷からは相当離れているわよね

 霊夢

第二次月面戦争のときはロケットで行ったわ

 魔理沙

最近だと夢の世界を通じて行ったな

 菫子

 夢の世界を通じて?

 魔理沙

ああ。夢の世界ってのはわかるよな?

 菫子

 よく知ってるわ。   
<完全憑依異変>のとき、色々あって大変だったんだから
(3人に増えたりしていましたね*編:八雲)

 霊夢

あの世界は色んな奴の夢で構成される世界だから、色んな場所へ通じているのよ

 魔理沙

それこそ月の都にもな

 霊夢

この世界は夢を喰らい、夢を創る妖怪<ドレミー・スイート>によって管理されているみたいね

 魔理沙

見た感じ外の世界とも繋がっていそうだったし…    
もしかしたら外の世界の人間の夢もドレミーに管理されているのかもな

 霊夢

夢の世界、今までは全然意識してなかったけど…
最近になって存在感が大きくなったわよね

 魔理沙

さっき菫子が言っていた<完全憑依異変>が起こってからだな

 霊夢

異変の主犯が夢の世界を通じて悪さをしていたせいで   
夢の世界の住人が現に出て暴れだしてしまったわ

 菫子

 夢の世界の住人ってなんか怒りっぽいのよね…   
気性が荒いというか

 霊夢

夢の世界では自分の欲望や感情が何倍にも増幅されて現れるみたいだからねえ

 魔理沙

夢の世界の自分の気性が荒いと感じたってことは…    
ハハ、そういうことなんじゃないか?

 菫子

 …ま、否定はしないけど



妖怪の山


 魔理沙

そろそろ幻想郷の話に戻ろうぜ

 菫子

 次は妖怪の山について教えてほしいわね

 霊夢

妖怪の山ねえ

 魔理沙

幻想郷一大きい山だ。(外の世界の富士山より大きいのです*編:紫)    
中には河童や天狗なんかが住み着いてる。    
昔は鬼や覚りなんかもいたらしいな

 霊夢

あと、あそこには格の高い神様が数多くいらっしゃるわ

 魔理沙

ほう、それは初耳だな

 霊夢

いやあんたも知ってるでしょ?   
例えば…<八坂 神奈子>や<洩矢 諏訪子>

 魔理沙

ああ、そういえばあいつら神だったか。    
何度か神らしい所業を見ているはずなんだが忘れていたぜ

 菫子

 そういえばあそこにも神社あるわよね。   
幻想郷って狭いわりにいくつも神社があったりするのかしら?

 霊夢

神社は博麗神社と<守矢神社>の2つだけよ。   
守矢神社はさっきも言った神奈子と諏訪子のものね。   
管理しているのは<東風谷 早苗>だけど

 菫子

 サナエっちは知ってるわ。   
時々博麗神社に遊びにくる子よね

 霊夢

商売敵だからね。偵察に来ているのよ

 魔理沙

偵察されるほどのことしているのか?

 霊夢

うっさいわね

 菫子

 河童や天狗もいるって言ってたけど、そのあたりはどんな感じなの?

 魔理沙

どんな感じって言われてもなあ。    
あ、そういえばあのへんは縦社会らしいな

 菫子

 縦社会だって?妖怪で縦社会?

 魔理沙

特に天狗が顕著だ。    
天魔がトップに立って、管理職である大天狗がその下にいる色々な天狗に    
指示をしているらしいな

 菫子

 妖怪の世界も世知辛いのねえ。   
しかも待遇に不満があっても転職とかできなさそうだし

 霊夢

天狗の世界のことはよくわからないけど、   
誰かに指示されるっていうのはいい気分じゃなさそうね

 魔理沙

しかも昔はさらにこの上に鬼がいたらしいからな。    
とてつもない格差社会だぜ



天界


 菫子

 そういえばここからも妖怪の山が見えるけど、   
さらにその上になんか微かに見えるのよね。   
地面が浮いているように見えるのは…多分気のせいじゃないわよね

 霊夢

あそこは天界よ。   
天人たちが住まう場所

 菫子

 天人…なんかすごそうね

 霊夢

修行を積んだ人間はあそこに住むことになるわ。   
あの場所へ行くことが仙人たちの夢みたい

 魔理沙

親の七光りで天人に成り上がるようなやつもいるがな

 霊夢

<比那名居 天子>のことかしら?あの地震娘

 菫子

 あの不良天人って言われてる子?

 霊夢

天子は昔、私の神社を倒壊させたのよ。   
しかも試し打ちで

 魔理沙

地震を起こした理由も『暇だったから』だしな

 菫子

 うわ、思ってたよりとんでもない人だった

 霊夢

とまあ、そんな感じで、天人っていうのは圧倒的に強い力を持っているのよ。   
性格に難があるやつがもつと幻想郷が危険に陥る程度には圧倒的な力をね

 魔理沙

実はまだ結構根に持っているのか?

 霊夢

当たり前でしょ!



地底


 魔理沙

上もあれば、当然下もあるぜ

 菫子

 下もある…地底かしら

 魔理沙

正解。旧地獄や灼熱地獄跡なんかはここだ

 菫子

 地獄…なんか地底のイメージ通りって感じね

 霊夢

といっても『旧』地獄よ。今の地獄は別のところにあるわ

 菫子

 ふーん。じゃあ今ここはどんな機能を持っているの?

 霊夢

主に嫌われ者の妖怪たちの住処になっているわね。    
特に嫌われている妖怪『覚り』、<古明地 さとり>は<地霊殿>に住んでいるわ

 菫子

 妖怪に嫌われた妖怪の住む場所なの?

 霊夢

そうね。あとは鬼なんかも見たかしら。   
雑多な妖怪たちが跋扈しているわ

 菫子

 地獄そのものね…地獄跡地なのに

 魔理沙

だがここのお陰で幻想郷には常に温泉が湧いているんだ

 菫子

 どういうこと?

 魔理沙

さっきも言っただろう?灼熱地獄跡があるって。    
ここで地下を熱して温泉を作っているんだよ

 菫子

 すごいわねえ。どうやってそんな熱量を確保しているのか気になるところだわ

 霊夢

核融合よ

 菫子

 …え?

 霊夢

核融合。よくわからないけど、原子?と原子?の融合?で熱が起きるみたいね

 菫子

 …え?え?え?核融合?   
まだ外の世界でも実現していないのに?

 魔理沙

こっちには『幻想の力』があるからな。    
神の力を借りれば核融合の制御だってお手の物さ

 霊夢

実際に核融合を起こしているのは神の力を宿しただけのただの地獄鴉、    
<霊烏路 空>だけどね

 菫子

 核融合までできるとは…    
幻想郷…恐ろしいところね…






幻想郷の歴史




 霊夢

まあ幻想郷の地理についてはこんなもんかしらねえ

 魔理沙

ほかにも色々とあるが、全部教えたってしょうがないからな。    
主要なところだけでいいんじゃないか?

 菫子

 ありがとう。幻想郷の地理だけじゃなくて    
幻想郷の危ういところまで知れて楽しかったわ

 霊夢

阿求、次はなんだっけ?

 阿求

次は幻想郷の歴史についてです

 菫子

 歴史かー。歴史については本当にまったく知らないわね。    
楽しみだわ

 霊夢

私だってそんなに長生きしてるわけじゃないから知らないわよ?

 阿求

博麗の巫女を継ぐときに教えられたことと、    
スペルカードルールの制定のことだけでいいですよ

 霊夢

だけって…結構喋らせるんじゃないの

 魔理沙

まあいいじゃないか、私だって知りたいぜ。    
特に継ぐときに教えられた情報ってやつをな

 霊夢

はあ…まあいいわ。    
じゃあまずは幻想郷の成り立ちから



幻想郷創始


 菫子

 そもそも幻想郷ってどういう経緯でできたのかしら?    
妖怪が一か所に集まるなんて、誰かが手引きしないとできないわよね?

 霊夢

勘がいいわね。    
まあ『幻想郷』って名前自体は『東の国の辺境の地』がもともとそう呼ばれてたみたいだけど、    今の幻想郷は賢者たちによって作られたものよ。    
その成り立ちは500年以上前、博麗大結界が張られる前から存在していたの

 魔理沙

ほう、初耳だな

 霊夢

さっき『博麗神社には2種類の結界が張られている』って話したでしょ?

 菫子

 えっと…確か<幻と実体の境界>と<博麗大結界>だったわよね。    
これ、<幻と実体の境界>については私もあまり詳しくないのよね

 霊夢

<幻と実体の境界>は<博麗大結界>より前に張られた結界よ。    
外の世界に対してこの結界の内側を幻と定義し、    外の世界で力の弱まった妖怪たちを呼び寄せる力を持っているの

 魔理沙

ということはこの<幻と実体の境界>こそが幻想郷を形作っているものなのか?

 霊夢

んー、半分正解ね。    
あとから博麗大結界を張ったってことは、まあそういうことよ

 菫子

 <幻と実体の境界>だけでは不十分だった、と…    
それはいったいどうして?

 霊夢

<幻と実体の境界>は幻想郷の中を『幻』にして妖怪を呼び寄せるだけのものだった。    
外の世界の文明の発展とともに非科学的なものは『迷信』として世の中から排除されていったの。    
そうしたら『幻』側の幻想郷は排除されちゃうでしょ?

 魔理沙

ははあ、なるほどな。    
そこで、幻側が排除されないための策が必要だったのか

 霊夢

そう、そこで提案されたのが『常識の境界』である<博麗大結界>よ。    
さっきも話したけど、この結界は    
外側の『常識』を内側の『非常識』に    
内側の『常識』を外側の『非常識』におく    
というもの。    
つまり、外の世界で非常識になればなるほど、こちら側では常識になるのよ

 菫子

 非常識として排除されるのを逆手にとったのね…

 霊夢

<幻と実体の境界>、<博麗大結界>の二重結界で幻想郷はようやく安定したわ。    
本当はここで<大結界騒動>ってのも起こったんだけど…

 阿求

そこまではいいです

 霊夢

了解。ま、知りたかったら自分で調べるといいわ



スペルカードルール制定


 魔理沙

そういえばその時はまだ『スペルカードルール』はなかったんだよな?

 霊夢

そうね。戦いは大抵じゃれあいか殺し合いの二極端だったわ

 菫子

 これも…必要になったから制定されたのよね?

 霊夢

勿論。『遊び』と銘打ってはいるけれど、その内情は『遊び』の一言じゃ済まされないわよ

 魔理沙

そもそもスペルカードルールとはどういうものかについて説明しておこうか。    
スペルカードルールっていうのは要は『遊びのルール』だ。『弾幕ごっこ』とも言うな。    
技を出す前に『宣言』して、その技の名前にあった技で『美しさを競う』    
これがスペルカードルールだ

 菫子

 こう聞くとなんとも平和なルールね。    
実際は結構激しい戦いなんだけど…

 魔理沙

だが現在もこのルールの範疇からズレてはいない。    
このルールから外れると大変なことになることをみんな知っているからだ。    
お前もこの機会に重要さを知っておくといい

 霊夢

はい、閑話休題。    
なぜスペルカードルールを制定する必要があったかだけど…    
そうね、妖怪と人間の共存関係については覚えているかしら?

 菫子

 えっと…    
妖怪は人間を恐怖させて存在を維持し、    
人間は妖怪に守られる…    
だったかしら

 霊夢

概ね正解よ。    
ここで考えてみてほしいのだけど、幻想郷って博麗大結界で隔離されちゃったわよね?    
つまり、人間が入りにくくなったのよ。しかも妖怪も外に出られない。    
これってどういうことかわかる?

 菫子

 うーん?    
妖怪は人間を襲わなくちゃいけなくて…    
だから人間を襲いたいけど、人間の数には限りがある…

 菫子

 あっ!…これって、妖怪側が人間を襲うことができないんじゃない?

 霊夢

その通りよ。    
襲ったとしてもそのせいで人間が減ってしまっては後々自分の首を絞める…    
結果、人間を襲うことができなくなり、妖怪の存在意義はなくなりつつあったわ

 菫子

 えーっ!まずいじゃない。    
妖怪のために創った幻想郷なのに妖怪が消えちゃうよ

 霊夢

実際、妖怪の力はどんどん弱まっていったわ。    
そのタイミングで起こったのが<吸血鬼異変>よ

 魔理沙

外の世界からまだ勢力を保っていた吸血鬼たちが幻想郷へ侵攻してきたんだ。    
力の弱っていた幻想郷の妖怪たちはなすすべもなくやられていったらしい

 菫子

 えっえっえっ、幻想郷崩壊の危機じゃないの

 霊夢

大丈夫よ、まだ力のある妖怪はギリギリ残っていたわ。    
幻想郷で最も力のある妖怪が力技で吸血鬼を叩きのめしたの。    
それでなんとかその場は収まったわ

 菫子

 ほっ

 魔理沙

だが問題はここからだな。    
この先もう一度同じようなことが起こったら今度こそ対処できなくなる。    
そこで作られたのが―

 霊夢

私が制定した『スペルカードルール』よ

 菫子

 スペルカードルールってレイムっちが創ったの!?    
すっごーい!

 霊夢

このスペルカードルールはあくまでも『お遊び』。    
だから妖怪側は大騒動を起こすことなく気軽に人間を襲えるようになったのよ。    
これによって妖怪たちは存在意義を得て、力を取り戻していったわ

 菫子

 へぇ…すごいわねえ。    
なにより面白いのは、人間の味方である博麗の巫女が妖怪のための政策を出したことだわ

 霊夢

博麗の巫女の使命は『幻想郷の均衡を守る』ことだからね。    
妖怪の味方ではないけど、幻想郷を守るためなら妖怪にも肩入れするわ






幻想郷で起こった異変・騒動




 阿求

次はスペルカードルール制定以後、起こった異変について解説していただきます

 菫子

 待ってました!異変の話が一番楽しみだったのよねー

 霊夢

これが最後?

 阿求

はい

 魔理沙

よし、じゃあ私たち『異変解決組』の活躍を面白おかしく解説といくか!



紅霧異変


 霊夢

まずは紅霧異変ね。主犯は【永遠に紅い幼き月】<レミリア・スカーレット>よ

 魔理沙

スペルカードルールが制定されてから初めて起こった異変だな

 菫子

 紅い霧で幻想郷中が覆われたんだっけ?    
これ、何が問題だったの?

 霊夢

霧自体が妖力を持ってたから、    
その中にいるだけで害があるのよ

 魔理沙

あと一日中薄暗いせいで作物の不作が不安視されたな

 菫子

 地味…地味じゃない?

 霊夢

実際に起こったところを見ているわけじゃないからそう感じるだけよ。    
妖力を持った紅い霧が幻想郷中を覆うってだけで、普通の人間にとっては恐怖だったんだから

 菫子

 そんなもんなのかしら?    
まあ、恐怖されていたなら妖怪の目的は達成できているのかも



春雪異変


 魔理沙

紅霧異変の次に起こったのは春雪異変だな。    
主犯は【幽冥楼閣の亡霊少女】<西行寺 幽々子>だ

 菫子

 幽々子さんって…幽霊よね?    
妖怪じゃないじゃない

 霊夢

これから先も妖怪以外が起こす異変はいっぱいあるわ。    
妖怪が異変を起こしやすいように、と作ったスペルカードルールだったけど色んなやつが起こしやすくなっちゃったみたい

 魔理沙

私としてはにぎやかになって楽しいから大歓迎だがな

 霊夢

異変の内容は『春にも関わらず春にならない』というものよ

 菫子

 そういえばさっき言ってたわね。    
春なのに春じゃないっていうのは春の時節に桜が咲かないとかそういうこと?

 霊夢

そういうこと。雪まで降ってたのよ

 魔理沙

宴会ができなくて困ったよなー。お花見の季節だったっていうのに

 菫子

 あなたたちっていつも宴会のことばかり考えてるわね…

 霊夢

菫子は外の世界の決まりでお酒が飲めないんだったわね。    
かわいそうだわ

 阿求

ちょっと、脱線しないでくださいよ。異変の内容について話してください

 魔理沙

おお、すまんな。    
春雪異変の原因は幽々子が冥界の妖怪桜、<西行妖>を開花させようとしていたことだ

 菫子

 桜を開花させようとして春が来なくなるって、ちぐはぐなような

 魔理沙

春が来なくなっていたのは地上だけだぜ。    
冥界は春真っ盛りだった

 菫子

 ってことは…地上から春を吸い取っていたの?    
そんなことまでできるのね

 霊夢

四季異変の時にも話すけど、幻想郷の季節は妖精によって作られているからね。    
その妖精が弱いからどうとでもしようはあるのよ

 魔理沙

んで、幽々子を叩きのめして幻想郷に春が訪れた…はいいんだが。    
春の来るのが遅くなったせいで厄介なことが起きてな。    
それが次の異変だ



百鬼夜行・宴会異変


 霊夢

春雪異変が収束して春が訪れた後、間もなくして次の異変が起こったわ。    
主犯は【萃まる夢、幻、そして百鬼夜行】<伊吹 萃香>よ

 菫子

 大忙しねえ。この異変はどういう異変だったの?

 魔理沙

宴会が頻繁に行われたんだ

 菫子

 …それだけ?    
幻想郷の人たちっていつも宴会してるじゃない。    
別に異変じゃないような…

 霊夢

三日おきよ?いくら宴会好きの幻想郷の住民でも異常だわ。    
しかも、その宴会には決まって妖霧が漂っていたの

 魔理沙

霊夢が珍しくへたっていたから私も異変解決に出たんだが…    
なんと、主犯は『鬼』だった

 菫子

 鬼…桃太郎とかにでてくるアレね?    
大体やられ役だしそんなに強いイメージないけど、    
幻想郷だと結構強いんだったかしら

 魔理沙

外の世界だとそんなイメージなのか…    
鬼は強いってもんじゃないぞ。    
妖怪の領域を完全に超越している存在だ

 霊夢

力もあり技術もある。特殊な方法で退治しないと倒せないわ

 菫子

 へえ…そんなにすごい奴だったのね、鬼って。    
でも倒せたんでしょう?

 魔理沙

いや、幻想郷からはもう退治する方法が喪われてしまっていたんだ。    
結局退治することはかなわなかった

 菫子

 えぇっ。異変未解決ってこと?

 霊夢

そういうことになるわね

 魔理沙

でもいつの間にか収まっていたよな。
仲間の鬼を呼ぶつもりだったみたいだし、なんで仲間が来てないのにやめたんだ?

 霊夢

まあいいのよ。悪さをやめたなら理由なんてどうでもいいわ

(霊夢、貴女の力ゆえに彼女の企みは失敗に終わったのですよ。
本人も気づいていないようだし、教える必要もないでしょうから言いませんけど
*編:八雲)




永夜異変


 霊夢

異変は立て続けに起こるわ。次は永夜異変。    
主犯は【月の頭脳】<八意 永琳>と【永遠と須臾の罪人】<蓬莱山 輝夜>よ

 菫子

 今回は主犯が2人いるのね。    
異変の名前から察するに…夜がずっと続く異変だったのかしら?

 霊夢

夜を止めたのは私たちの方よ

 菫子

 ??? どういうこと?    
どうして異変解決する側が異変を起こしているの?

 魔理沙

表向きは夜が止まる異変…その認識で間違いない。    
少なくとも、幻想郷の人々はそう思っていたはずだ

 霊夢

でも実際は違った。    
この永夜異変の裏では『月が偽物の月と入れ替えられる』という異変が起こっていたの

 阿求

えっ

 霊夢

あ、そういえば阿求にちゃんと話すのは初めてだったっけ?

 阿求

夜が明けない異変の裏があったなんて初耳です

 霊夢

言ってなかったからねえ。
だって、夜を止めたのが私たちだなんて人間にばれたら何言われるかわからないじゃない

 菫子

 言ってよかったの?

 霊夢

昔の話だし、もういいでしょ。ほら、話をつづけるわよ

 魔理沙

まずは月を入れ替えた理由だが…    
永琳は輝夜を月の使者から隠すために本物の月と偽物の月を入れ替えたみたいだな

 菫子

 ん、待って。    
竹取物語でもかぐや姫は月からのお迎えが来てたし、そこはわかるわ。    
でもどうして月を入れ替えると防げるの?

 霊夢

『満月』が幻想郷と月を繋ぐトリガーになっているからよ。    
月から幻想郷にくるには満月が必要なの。    
だから、満月をそもそも『なかったこと』にして、幻想郷自体を大きな密室にしたみたい

 菫子

 すごい大規模…    
でもそんなことして幻想郷に影響はなかったの?

 霊夢

もちろんあったわ。毎日夜になると偽物とはいえ満月が昇るようになってしまった。    
妖怪はそのほとんどが満月の魔力の影響を受けるからね。    
段々悪影響がでてきていたみたいよ

 菫子

 妖怪側に影響がある異変か…今までにないタイプね

 霊夢

異変解決を持ち掛けてきたのは妖怪側だったわ。    
そして私は紫とともに『夜を止めて』異変解決へ向かった

 魔理沙

恥ずかしながら私は夜が止まる異変だと思っていてな。    
確か途中で霊夢と戦ってるよな?

 霊夢

後ろの異常な月を見ろって言ってるのに、聞かないんだから

 魔理沙

人間に異常か普通かなんてわかるもんかい。    
ちょっと大きいかなとは思ってたがな    
(普通の10倍のサイズはあったはずですけどね*編:紫)

 霊夢

ま、そんな感じで輝夜までたどりついて叩きのめしたわ。    
その後に輝夜が私たちの永夜の術を破って、すべての異変が収束したのよ

 菫子

 うーん待って。てことはこういうこと?


①永琳が月を入れ替える
②霊夢たちが夜を止める
③輝夜が異変を解決する



 霊夢

そういうことね

 阿求

まさか博麗の巫女が異変を起こしていたとは…    
これは確かに、当時知っていたら誤解は免れなかったでしょうね

 菫子

 異変を起こした側が異変を解決しているのね…    
なんだか複雑だわー



六十年周期の大結界異変


 霊夢

次に起こったのは大結界異変ね。    
主犯らしき主犯はいないわ

 菫子

 主犯がいない異変?どういうこと?

 魔理沙

この異変は幻想郷で六十年に一度、必ず起こるんだ。    
主犯は強いて言うなら幻想郷そのものだな

 菫子

 そんな異変もあるのねえ。    
どんな感じの異変だったの?

 霊夢

あらゆる季節の花が一度に咲く異変ね

 魔理沙

どうも六十年に一度、外の世界で幽霊が増える出来事が起こるらしい。    
花が一度に咲くのは植物に大量の幽霊が憑くかららしいぜ

 菫子

 幽霊が増える出来事ってつまり…

 霊夢

そういうことね

 魔理沙

この異変はいわば幻想郷の『代謝』のようなものだ。    
この異変を経て、幻想郷は一度『生まれ変わる』

 菫子

 なんにしても、害のない異変なのね。    
花が咲き誇って生まれ変わるだなんて素敵。    
原因がアレだけど…



神社騒動


 霊夢

ここからは異変というより『騒動』って感じのものも混ざってくるわ

 菫子

 騒動?

 魔理沙

異変と呼ぶほどのことではない、って感じだな。    
でも一応私たち異変解決組が出ているから説明するぜ

 霊夢

あれは第122季(2007年度 *編:八雲)、椛の葉が赤らみだしたころ。    
一人の巫女もどきが私の神社にやってきてこう言ったわ。    
『博麗神社を我が神社の下に置け』    
門前払いよこんなもん

 菫子

 我が神社の…?    
もしかして、その巫女もどきってサナエっちのこと?

 霊夢

そうよ。    
あいつの神社、<守矢神社>が外の世界から湖ごと妖怪の山に引っ越してきたの

 菫子

 湖ごと!?

 魔理沙

あそこの神は湖が力の元らしいからな。必要だったんだろう

 菫子

 それにしたって湖ごとだなんて、余程力があったのねえ

 霊夢

それでも幻想郷に来なければならなかった。    
外の世界の信仰心の衰退は由々しきものね

 菫子

 ちなみになんていう神社が入ってきたかとかわかる?    
力がある神社ならそこそこ大きそうだしわかるかも

 霊夢

さあ…?私たちは外の世界での名前とか聞いてもわからないから聞いてないわね

 魔理沙

私は聞いたことがあるぜ。    
確か…諏訪大社とか言っていたな

 菫子

 諏訪大社だって!?    
あんなに大きい神社が…    
というか湖ごと移動って、よく外の世界の人間に覚られなかったわね

 霊夢

幻想郷は外の世界の時空がねじ曲がって『裏側』に入っているだけだからね。    
私の神社もそうだけど、表―つまり外の世界に存在したまま、幻想郷に存在することもできるのよ

 菫子

 んー…そういえば私も外の世界で寝て、その体を残したままこっちの世界に入ってきているから同時に2人存在しているのか

 霊夢

…まああんたの場合は特殊な気がするけど、大体そんな感じよ

 魔理沙

で、今その神社がどうなっているかだが…    
このあたりは霊夢の方が詳しそうだな。なあ?

 霊夢

なんで私に振るのよ

 魔理沙

いやあ、あらゆる活動で負け続けているお前があの神社にどういう考えを抱いているのか気になっただけだぜ

 霊夢

あんた、いい死に方しないわよ

 魔理沙

ありがとう

 霊夢

ほめてない!



天候・地震の異変


 霊夢

守矢神社が妖怪の山に現れてから一年後、異常気象が幻想郷を襲ったわ。    
主犯は【非想非非想天の娘】<比那名居 天子>よ

 菫子

 あっ、さっき言ってた博麗神社を壊した子

 魔理沙

そうそう、その壊した事件がこの異変だぜ

 霊夢

天子は気質を自由に操ることのできる剣<緋想の剣>を持っていたの。    
この剣は対峙する相手の気質を霧に変えることができる剣だったわ。    
霧はやがて天に昇り、雲になる。そして形を変え、天候を為す

 菫子

 つまりその剣を使えば天候を操れたわけね

 霊夢

そう、そしてこれこそが異常気象の原因だったわ。    
この異変が起こっている間、人妖の周囲はその者の気質に合わせた天気に変わっていたの

 菫子

 …なんか聞いてるだけだと面白そうな異変ね

 霊夢

面白くないわよ。この後地震が起こるのよ?

 菫子

 あっ…忘れてた

 魔理沙

私にとっても、地震は起きてなかったが面白い異変ではなかったな。    
私の周りだけずっと小雨が降ってるんだぜ?    
じめじめしてしょうがない

 霊夢

私は快晴だったからそんなに不便ではなかったけど…    
でも問題はここから!

 魔理沙

私が遊びにいったときだな。    
なんか神社がぶっ壊れてておったまげたぜ

 霊夢

私の神社の直下にだけ、ピンポイントで大地震が起こったの!    
もともとそんなにしっかりした造りじゃないから一発よ

 魔理沙

屋根が真下に落ちてたもんな。ぺしゃんこだ

 菫子

 ひえっ、よく無事だったわね

 魔理沙

こいつ、運だけはやたらいいからな

 菫子

 しかしそんな大地震が起きたら周りにも影響でそうなもんだけど、    
周りは大丈夫だったのかしら?

 霊夢

さっきも言ったでしょ?『私の神社の直下にだけ』起こったのよ

 菫子

 そんなことって…    
あっ、さっき言ってた『暇つぶしで神社を潰した』ってこれ!?

 霊夢

そうよ

 菫子

 ということは天子さんは地震を操る力を持っているのね

 魔理沙

惜しいな、もっと高位だ。<大地を操る程度の能力>だったかな?    
土砂崩れなんかもお手の物らしいぜ

 菫子

 災害の申し子みたいな能力ね…

 霊夢

許せないからすぐに天界に行って叩きのめしたわ。    
それで神社を直させたはいいんだけど…

 魔理沙

なんか紫がまたぶっ壊してたよな?あれなんでだっけ

 霊夢

うーん、なんか神社が支配されそうになってたとかなんとか



間欠泉の異変


 霊夢

さて…次はさっきの守矢神社の神のせいで起こった異変よ。    
中心人物は【熱かい悩む神の火】<霊烏路 空>

 魔理沙

神奈子が地底にいる地獄鴉にあろうことか神の力を与えたんだ

 菫子

 なんて神?

 魔理沙

八咫烏だ。太陽の神だな

 菫子

 太陽の黒点の神格ね。    
ああ、そういえばさっき灼熱地獄跡で核融合が行われているって言ってたわね

 霊夢

最初はいきなり温泉が湧いて喜んでたんだけどねえ

 魔理沙

地底からお湯が噴き出したせいでそれに乗って地底の悪霊まででてきてしまったんだ

 菫子

 悪霊かあ。それは退治しないわけにはいかないわね

 霊夢

…うん、まあ、その

 魔理沙

退治してないけどな、こいつ

 菫子

 え?それ大丈夫なの?

 霊夢

思ったより大人しくてね。特に退治する必要性も感じなかったから放置してたわ

 魔理沙

そしたら妖怪側から解決しろって言われてな

 菫子

 えぇ…なんか、博麗の巫女って意外と…

 霊夢

意外となによ!    
地上の妖怪が勝手に危機感を覚えて私たちに頼んできただけよ

 菫子

 あ、そう…

 霊夢

なによその反応。    
もう、守矢の神がこんなことをしなければこんな屈辱を受けることもなかったのに

 魔理沙

まあいいじゃないか、あいつらのおかげで幻想郷に間欠泉ができたんだぜ?

 霊夢

よくない!



宝船騒動


 霊夢

次は聖輦船の話かな。    
騒動の中心人物は【封印された大魔法使い】<聖 白蓮>よ

 魔理沙

この騒動が終わってから命蓮寺が建てられたんだ

 菫子

 どんな騒動だったの?

 霊夢

突如幻想郷の空に宝船が出現したの。名は<聖輦船>

 魔理沙

周りにはUFOも飛んでいたな

 菫子

 おぉ、UFO。オカルト的な話になるとわくわくするわ

 魔理沙

あんまりUFOは関係ないけどな。    
で、その船が飛んでいた理由だが…    
どうも<魔界>に封印されている白蓮を助け出すことが目的だったみたいだ

 菫子

 白蓮って、さっき言ってた人間にも妖怪にも分け隔てなく接する聖人よね?    
幻想郷から来る前から恩義を抱かれるような人だったのね

 霊夢

まあ容赦なく叩きのめしたわけだけど…

 菫子

 えぇ…

 魔理沙

とりあえずわからないものがあったら叩きのめしてみればわかるからな

 菫子

 幻想郷って脳筋しかいないのかしら

 魔理沙

ああ、そうそう。    
さっき言ってたUFOだが…これは飛倉の破片だ。    
これが集まれば聖輦船は魔界へ向かうらしい

 菫子

 なんかRPGみたいね。    
なんでUFOの形しているのかは気になるけど

 霊夢

それは私たちがそう見えていただけみたいよ

 菫子

 ?? どういうこと?

 魔理沙

<封獣 ぬえ>ってのがいてな。    
こいつは<正体を判らなくする程度の能力>を持っているんだ。    
だから周囲に飛んでいる飛倉の破片が私たちにはなんなのかわからなくなって、    
適当に解釈したものが見えるようになっていたらしい

 菫子

 ふぅん…外の世界のUFOも案外そんなもんなのかもねえ



神霊騒動


 霊夢

次に起こったのは…神霊がぽこぽこ湧いた騒動かしら?    
主犯は【聖徳道士】<豊聡耳 神子>よ

 菫子

 あ、出たわね。ライバル意識で復活した聖徳太子

 魔理沙

菫子の中の神子のイメージが変な方向に

 霊夢

この騒動は幻想郷のいたるところで正体不明の霊が湧いたり消えたりしたものよ。    
正体は神霊。人の欲が具現化したものね

 魔理沙

神子が復活したことで神霊たちが自らの欲を満たしてもらおうと神子の周囲に集まっていたみたいだな

 菫子

 聖徳太子ってやっぱりカリスマすごいのねえ

 霊夢

ちなみにこの騒動の話はこれで終わりよ

 菫子

 はやっ

 魔理沙

神子たちを倒した理由も『前に立ちふさがったから』だからな。別にこれ以上喋ることはないぜ

 菫子

 異変解決組って喧嘩っ早くないとなれないのかしら…?



感情の異変


 霊夢

さあ、ここまでの騒動で役者はそろったわね

 菫子

 役者って…なんの?

 魔理沙

宝船騒動で仏教が、神霊騒動で道教が現れた…    
ここまで言えばわかるだろう?    
宗教戦争の開幕だ!

 霊夢

きっかけは人々の心から希望が喪われたことよ。    
主犯は【表情豊かなポーカーフェイス】<秦 こころ>

 菫子

 希望が喪われるって…これまた大規模ね。    
いったいどうしてそんなことが?

 魔理沙

こころが希望のお面を落としただけだぜ

 菫子

 落としただけで失われるの?

 魔理沙

あいつは感情を操る面霊気(お面の付喪神 *編:八雲)だからな。    
そいつが感情のひとかけらを落とすだけで人々からも同様にその感情が喪われるのさ

 菫子

 なにそれ…こわすぎる

 霊夢

そうして希望が喪われた人々を救おうと立ち上がったのが私たち宗教家よ。    
私たちが希望となり人々を導くことができれば、    
それすなわち人民を救うことと同義なり!

 菫子

 この機に乗じてお金稼ぎしようとしていただけじゃないの?

 霊夢

なにが悪いのよ!

 菫子

 開き直るのは予想外だったわ

 魔理沙

とまあそんな感じで結構大変な異変だったんだが、    
最終的には神子が新しい希望のお面を作ることで収束したな

 霊夢

あのお面で…解決したのよね…    
なんというか…うーん

 魔理沙

まあ、解決したんだからいいじゃないか。    
私もアレはどうかと思うけど…



逆様異変


 魔理沙

宗教戦争も無事集結して、次に起こったのは下剋上だった。    
主犯は【逆襲のあまのじゃく】<鬼人 正邪>と【小人の末裔】<少名 針妙丸>だ

 菫子

 下剋上かあ。    
これって誰から誰に対する下剋上なの?

 魔理沙

『弱き者』から『強き者』への下剋上だな。    
私たちは下剋上される立場だった

 菫子

 結構範囲がアバウトね。    
弱い者が強い者にってだけでも不利だろうにこれだけ範囲が広いと敵も多そう。    
本当に達成できるのかしら?

 霊夢

あっちにはそれを解決する策があったのよ。    
あんた針妙丸をかわいいかわいいって言ってくっついてたんだから知ってるでしょ?

 菫子

 …あっ!<打ち出の小槌>!

 魔理沙

そう、小人の秘宝<打ち出の小槌>だ。    
やつらはこれを使って夢幻の力を得て下剋上を起こした

 霊夢

容赦なく叩き潰したけどね

 菫子

 なんかこっちの方が悪者みたい…

 魔理沙

実際弱き者にしたらこっちが悪者であっているだろうな。    
だが幻想郷では異変を起こした者は巫女に倒される、これが摂理だ

 菫子

 あの子も結構壮絶な過去を辿ってきたのねえ

 霊夢

中心となっていたのは針妙丸だけど裏で手引きしていたのは正邪よ。    
針妙丸に嘘の歴史を吹き込んで打ち出の小槌を使わせたの

 菫子

 正邪って…確か今も逃げ続けている幻想郷のお尋ね者よね?

 魔理沙

そうだ。    
意外としぶとくてな。今もまだ捕まっていないみたいだ

 菫子

 幻想郷で異変が解決してからも周りと打ち解けない人って珍しいわね

 霊夢

あいつは『あまのじゃく』だからね。    
誰かと仲良くなるということ自体が苦痛なんだと思うわ



都市伝説異変


 霊夢

逆様異変が沈静化してすぐ、大きな異変が起こったわ

 菫子

 ほう

 霊夢

人々の噂が具現化し

 菫子

 ん?

 霊夢

博麗大結界まで破壊されかけた大異変

 菫子

 …

 霊夢

この異変の主犯…誰かわかるわよね?

 菫子

 …えへへ、私でーす

 霊夢

えへへじゃなーい!

 魔理沙

反省の色なしだな

 霊夢

そろそろ喋り疲れてきたからここは菫子が自分で解説してよ

 菫子

 わかったわ。それじゃ改めて…    
私が起こしたのはオカルトボールを利用して博麗大結界を破壊した異変です。    
主犯は私、【深秘を曝け! 秘封倶楽部初代会長】<宇佐見 菫子>です

 魔理沙

なんで敬語?

 菫子

 こういうのってなんか緊張するでしょ!    
…オホン、えーっと、私の作戦はこうよ


①オカルトボールを幻想郷内部へ入れる
②オカルトボールを集めた者を『鍵』とする
③博麗大結界の矛盾を突いて破壊する



 菫子

 私の目的は大結界を破壊し、つまらない世の中を変えること。    
もうすぐ成功ってところでレイムっちに邪魔されちゃった

 霊夢

幻想郷が破壊されようとしているのに黙ってみているわけないでしょ!

 魔理沙

これ、よくわからないのが大結界の破壊の仕組みなんだよな。    
どうなっているんだ?

 霊夢

まさかあんたも破壊する気?

 魔理沙

そんなわけないだろ!解説させないと企画が成立しないからだよ

 阿求

魔理沙さんが想像よりしっかりしていて助かります

 魔理沙

どういう意味だコラ

 菫子

 破壊は博麗大結界の性質を逆手にとって行うつもりだったわ。    
大結界は外の世界の『常識』を幻想郷の『非常識』に    
幻想郷の『常識』を外の世界の『非常識』におくものでしょ?

 霊夢

そうね

 菫子

 じゃあ、外の世界の『非常識』が幻想郷にとっての『非常識』であるまま持ち込まれたらどうなると思う?

 魔理沙

それは…    
入ってきてまたすぐに追い出されるだろう?    
大結界はそういうものだ

 菫子

 そう、私はそれを利用したの。    
オカルトボールは外の世界でできたもの。    
でも外の世界の『常識』ではなかったわ

 霊夢

幻想郷でも見たことがなかったし、幻想郷の『常識』でもないわね。    
つまりどちらにとっても『非常識』である。    
すぐに追い出されるものである、と…

 菫子

 すなわち、このボールが幻想郷から外の世界へ排出されるときにその力を解放することによって、博麗大結界を内側から破壊することができる!

 魔理沙

…は~…なるほどなあ。よく考えてあるぜ

 霊夢

なに感心してるのよ。    
こいつのせいで幻想郷は崩壊の危機だったのよ?



浄化異変


 菫子

 そういえば私が起こした異変、都市伝説異変って名前がついているのよね

 魔理沙

オカルトボールが現れると同時に都市伝説が具現化する異変が起こったからな

 菫子

 おかしいわねえ、私そんなことした覚えはないんだけど

 霊夢

それはね菫子。貴女もまた利用される立場にいたからよ

 菫子

 なんだって?

 魔理沙

都市伝説異変の裏ではもう一つ大きな異変が動いていたんだ

 霊夢

名を<浄化異変>。    
主犯は【舌禍をもたらす女神】<稀神 サグメ>よ

 菫子

 浄化異変…?

 魔理沙

ああ。ある日、妖怪の山に蜘蛛のようなものが出現したんだ。    
それは移動するたびに草木を枯らし、山を荒らしていった

 菫子

 そんなことをしたら山の妖怪たちがすぐに止めるでしょうに

 魔理沙

ところがどっこい。    
山の妖怪たちはそれに気づいていなかったんだ

 霊夢

それどころかいることを教えても『見えていない』ようだったわ

 菫子

 それは…妙ね

 霊夢

このままじゃ妖怪の山が、それどころか幻想郷全体が丸裸にされかねないから急いで異変解決へ向かったわ

 魔理沙

辿り着いた先は月の都だ

 菫子

 月の都?月って…どうやって

 霊夢

さっきも言ったでしょう?月へ行く方法はいくつもあるの。    
今回は夢を通っていったわ

 魔理沙

夢の支配者である<ドレミー・スイート>に月の都まで連れて行ってもらったんだ

 霊夢

そこで目にした光景を見て驚いたわ。    
月の都が凍っていたの

 菫子

 人がいなかったってこと?

 魔理沙

いや、文字通り凍っていた。    
聞くところによると、月の都全体の活動を停止させていたみたいだな

 菫子

 どうしてそんなことを…

 魔理沙

それはな、月の都こそが『侵攻されている』側だったからだ

 霊夢

月の都には永い間戦ってきた敵がいたのよ。    
名は【(無名の存在)】<純狐>

 魔理沙

どうもそいつに襲われていたらしいな

 菫子

 ということは幻想郷を浄化していたのもそいつ?

 霊夢

違うわ。幻想郷を浄化していたのは月の民の作った地上探査車よ

 菫子

 うーん…?ということは…    
!    
もしかして、月の民が『幻想郷に逃げ込むために』幻想郷を浄化していた…?

 魔理沙

その通りだ。はた迷惑な話だがな。    
月の民は生命に満ち溢れた穢れた地が苦手なんだ。    
だから逃げ込む前に幻想郷を浄化する必要があった

 霊夢

周囲もその弱点を利用されて純化された妖精で満たされていたわ。    
純化された妖精は生命力の塊だからね。逃げ場ナシってこと

 菫子

 月の民って強いんでしょ?なんとかできなかったのかしら

 霊夢

単純な話よ。侵攻している側が月の民よりもはるかに強いの

 菫子

 嘘でしょ!?吸血鬼を簡単に倒す月の民を容易く蹴散らすなんて

 魔理沙

私たちも苦戦したなあ

 霊夢

純狐の能力は…まあ、なんとなく名前からわかるかもしれないけど<純化する程度の能力>よ。    
少しでも穢れ、つまり失敗したことがあったらそれを純化されて瞬殺されるわ

 魔理沙

そうそう、だから一度もミスをせずに純狐と対峙しなくてはならなかった

 菫子

 ひえ…すごいわね…

 魔理沙

戦うときには既にあっちの戦意も喪失してた感じで納得いかないけどな

 霊夢

何千年も同じこと繰り返して飽きてきてるんでしょ。    
私たちには一生わからない感覚だわ

 菫子

 これを解決したってことは、月の都も救ったってことなのよね。    
なんかもうスケールが違うわ

 魔理沙

んーまあそうだな。    
のあと夢の世界に閉じ込められた月の民を救ったりもしたし、    
月の都も救ったってことになるのかな

 霊夢

この恩はきっとなにかで返してもらうわ

 菫子

 がめつい巫女だなあ



完全憑依異変


 菫子

 ここからは私も知っている異変になるのかしら?

 魔理沙

そうだな。この<完全憑依異変>なんかはお前も楽しんだんじゃないか?

 菫子

 それがねえ…それどころじゃなかったのよね…

 霊夢

そういえばこの異変の間、あんたの姿見なかったわね。    
どこでなにしてたの?

 菫子

 それがぁ…

 阿求

あ、その話に入る前に異変の概要と主犯の話を

 霊夢

あっと、そうだったわね。    
<完全憑依異変>は精神だけでなく肉体まで入れ替わる現象、<完全憑依>が蔓延した異変よ。    
主犯は【最強最悪の双子の妹】<依神 女苑>と【最強最悪の双子の姉】<依神 紫苑>ね

 魔理沙

疫病神と貧乏神の姉妹だな。    
相手にしたくないやつらだったぜ

 霊夢

こいつらの目的はただの『金儲け』よ。    
今までの異変が壮大な目的の下に行われていた分、少ししょぼくみえるわね

 魔理沙

起こった異変の内容は全然しょぼくないけどな

 菫子

 そういえばこれも都市伝説異変の影響で起こったんだっけ?

 霊夢

そうよ。    
都市伝説異変は『噂が具現化する』異変だからね。    
完全憑依できるって噂が流れたせいで誰でもできるようになったみたい

 魔理沙

そう考えると菫子って大きい異変を3つも起こしているんだな

 菫子

 えーっ私あんまり関係ないのに

 霊夢

完全憑依異変の厄介なところはその解決のしにくさと副作用にあったわ。    
主犯はすぐにわかったんだけど

 菫子

 主犯がわかっているならすぐにぶちのめして終わりそうなもんだけど…    
どうして解決できなかったの?

 魔理沙

相手が貧乏神と疫病神だからだ。    
流行っている完全憑依を使って2対2で戦おうとすると、    
女苑の力で『憑依している側』を入れ替えられて貧乏神に憑依されるんだ

 菫子

 貧乏神に憑依される…?あっ

 霊夢

この時点で負け確定よ。    
だからなかなか解決できなかったの

 魔理沙

そういえばこれ結局どうやって解決したんだ?    
確かお前と紫が協力して解決したんだよな

 霊夢

完全憑依を入れ替えられる瞬間に、紫が『憑依の境界』を弄ったのよ。    
だからマスター(憑依されている側 *編:八雲)とスレイブ(憑依している側 *編:八雲)が入れ替わって、    貧乏神がマスター側に引きずりだされたの

 菫子

 あ、そっか。    
貧乏神って自分も不幸だから、自分が戦ったら絶対に負けるのね

 霊夢

そうよ。だからこの場は叩きのめして収まったわ

 菫子

 この場は?

 霊夢

問題はこのあとだったわ。    
完全憑依の性質についてよく理解していないのが仇となったのよ

 魔理沙

お、そのへんの話は私も初耳だな。教えてくれ

 霊夢

紫から聞いた話だけどね。    
完全憑依って、スレイブ側の元の体はどこにいくかわかる?

 魔理沙

んー。肉体も入れ替わるのが完全憑依だから…    
あれ?もしかして完全憑依をしているときってこの世から消えているのか?

 霊夢

そうよ

 菫子

 なにそれこわい

 魔理沙

そうか…いつの間にか私は死んでいたのか…

 霊夢

死んでいるわけではないわ。この世ではないどこかへ飛ばされているだけ

 魔理沙

この世ではないどこか?

 菫子

 完全憑依ってどの場所にいる人にでもできるのよね。    
ということはどんな場所にでも繋がる空間…『夢の世界』じゃないかしら?

 霊夢

お、勘がいいわね。その通りよ

 菫子

 やったぁ

 霊夢

完全憑依は夢の世界を経由して行われる…    
これが問題だったのよ

 魔理沙

どういうことだ?ただ夢の世界に入るだけだろう?

 霊夢

私たち生身側の存在が夢の世界に入るときには    
夢の世界側の私たちを追い出して入る必要があったのよ

 魔理沙

…夢の世界の私たちが現に出ていた、と?

 霊夢

そう。欲望や感情が何倍にも膨れ上がり、喧嘩っ早くなるあの夢の世界の私たちが

 菫子

 なるほどねえ。確かに自分の姿にそっくりな人が変なことしてたらいやだもんね

 霊夢

違う。この現象の危険なところはそこじゃないのよ

 菫子

 んー…ほかにもなにか?

 霊夢

力を持った者が感情的になったらどうなるか…    
わかるでしょう?    
例えば鬼がその力を思うままに使い始めたら、紫があらゆる境界を裏返し始めたら

 魔理沙

…ゾッとするぜ

 霊夢

そして天人が…全てを壊そうとしたら

 菫子

 ! 比那名居天子ね!

 霊夢

幸い紫に事態の収束を命じられた依神姉妹が食い止めたみたいだけど…

 魔理沙

そんな事態が起こっていたのか?    
知らないうちに永遠の眠りにつくところだったな…



四季異変


 霊夢

最後は一番最近起こった異変、<四季異変>についてね

 菫子

 幻想郷が色々な季節になった異変ね

 魔理沙

博麗神社は春、私の家魔法の森は冬、    
妖怪の山は秋ともうめちゃくちゃだったな(*編:八雲)

 霊夢

主犯は【究極の絶対秘神】<摩多羅 隠岐奈>よ。    
幻想郷創設に携わった賢者の一人でもあるみたい

 菫子

 すごい人じゃない。どうしてこんな異変を?

 霊夢

二童子(隠岐奈のしもべ  *編:八雲)の後任探しと言っていたわね

 魔理沙

大異変が立て続けに起こったあとだから幻想郷の現状確認かもしれないぜ

 霊夢

まあ理由なんてどうでもいいのよ。    
異変を起こした奴は倒す、それだけ

 菫子

 一貫してて尊敬できるような、怖いような

 霊夢

さあ、解説よ。    
いろんなところでいろんな四季が発現していたのは隠岐奈の能力によって各地の妖精たちが暴走していたからみたいね。    
前も言ったけど、幻想郷の季節は妖精によって作られるのよ

 魔理沙

妖精だけじゃなく、色んな奴らの気が大きくなっていたな。    
大人しいはずの<矢田寺 成美>まで襲い掛かってきてたし

 霊夢

異変自体は季節がめちゃくちゃになるってだけだったけど、    
これよく考えると大変なことよね

 菫子

 作物がめちゃくちゃになりそう

 霊夢

いやまあそれもあるんだけど

 霊夢

季節を操るって言ってみれば幻想郷を操れるのと同義よ?    
幻想郷の賢者っていうのもうなずけるわね






おわりに




 霊夢

はあー語った語った

 阿求

最後に、今の幻想郷について軽く語ってください

 霊夢

まだあるのー?

 魔理沙

今の幻想郷についてと言ってもなあ

 菫子

 私は今も刻刻と変化し続けている幻想郷にわくわくしつづけているわ!    
次はどんな異変が起こるんだろう

 霊夢

ちょっと、それを解決するのは私の役目なんだからね。    
面倒臭いんだから異変なんて起こらない方がいいのよ

 魔理沙

なんだかんだ言って異変解決も楽しんでいるくせに

 霊夢

今はあんたが一番面倒くさいわ

 魔理沙

ひどくねえか?

 菫子

 あはは、幻想郷は今日も平和ねえ

以上でこの記事はおしまいです。
楽しんでいただけたしょうか。もしこの記事を読んで幻想郷に行きたいという方がいたら言ってくださいね。
私たちはいつでもあなた様のご来訪をお待ちしております。
明日の担当は『いとさと』さんです。


幻想郷はすべてを受け入れます。それはそれは残酷な話ですわ。

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