音楽理論のすゝめ(持論)Part3「奇の衒い方とメロディ」

挨拶

皆さんこんにちは、前々回、前回に引き続きMtです。
今回は僕がこの記事を書くきっかけの、「コード進行でどう奇を衒うか」、「メロディをどう作るか」です。

僕が長い時間をかけて気付いた事などに成るべくまっすぐたどり着けるように書いてきましたが、本命はここです。
正直、最初の二つは他のサイトを見たり自分で触ってみる方が圧倒的に早いと思うし、分かりやすいとも思っています。
ですが、ここは完全に僕の経験、いわば持論のみの部分なのでそんなあなたにとっても新しい考えとなるんじゃないかなと思ってます。
そうなってくれたら嬉しいです。

そんな挨拶もほどほどに、さっそく解説を始めていきます。

よくある系コード進行の難しさ

僕は前回、3つほど守るべき要素を書いたと思います。
強進行弱進行Iからの進行です。

確かにこれらを守れば、(よほど奇抜な音の重ね方をしない限り)ほとんどコード進行は破綻しないでしょう。
しかし、最近の世の中、大量の曲が既にネットの海に揺蕩っています。
僕は、その状況から
分かりやすいコード進行も大切だけど、奇抜さも入れられるようにした方が良い
と考えています。

そうなると、よくネットで解説されている「丸サ進行( IV | III | VIm | I )」や「王道進行( IV | V | IIIm | VIm)」などだけでは、聞いている側からすると「なんか聞いた事のある雰囲気」となりやすいのです。
この雰囲気が好きで聞いている人ならいいのですが、そうでない場合(いわゆるよくある進行アンチ)にとっては「詰まらない」と思われることもしばしばあったりするのです。

それに対策する場合、どのようにするべきか。
これの答えの一つとして、「自分で奇を衒ったコード進行を書く」という方向に僕は舵を切りました。

コード理論の解釈の拡大

ということで、先に書いた「3つの要素」だけでは並のものに収まってしまうという事で、
まずは使えるコードの選択肢を増やすことから考えるべきだと思いました。
そのため、まずは3つの要素を更に大きく広く解釈していきます。
それには、もう少し音に対する理解が必要です。

トライトーン

まずは「トライトーン」というものの話です。
トライトーンとは、音の重なりで一番濁る音といっても過言ではないものです。
その重なりは、音と音の間を5つあけたものです。

スクロールできます
元の音CC#/DbDD#/EbEFF#/GbGG#/AbAA#/BbB
トライトーンF#/GbGG#/AbAA#/BbBCC#/DbDD#/EbEF
トライトーン対応表

これを見て頂けると分かるように、かなり対称的になっています。
実はこの12音は様々なところで対称性が出てきます。今回はその一角が現れたような形だと思って頂ければいいです。

さて、このトライトーン、単体の音としてはかなり奇抜で奇妙な音に感じると思います
この音は人間の不快になる音として有名で、緊急地震速報などでも用いられています。

こんな音どうやって使うんだ!!
これほどまっすぐな疑問はないでしょう。しかし、あなた方は既にこの音を用いたコードを知っています

それは、dimのコードセブンスのコードです。
dim、dim7-5は1つ目と3つ目の音が、セブンスは2つ目と4つ目の音が、
そしてdim7に至っては1つ目と3つ目、2つ目と4つ目の音がそれぞれトライトーンとなっています。

つまり、こんな不協和音と呼ばれかねないような音の重なりでも、ちゃんと使えばいい動きが出来るというわけです。

アヴォイドノート

次に紹介するのは「アヴォイドノート」です。
意味としては「avoid note」、避けるべき音です。
関係としては、その音に対して1オクターブ上の、さらに半音上の音です。
例えば、C3に対してC#4です。(後ろの数字はオクターブの高さだと思ってください。)

この概念はかなり頻繁に出てきます。メロディでも、コードを複雑化する際にも。

とりあえずある程度この音は避けるべき、と思って頂ければ大丈夫です。

コード”進行”の意味

ここまで話を聞いて、こうは思いませんでしたか?

進行って何?」

この質問に対して僕は、進行というのは
落ち着く方向に向かう推進力を利用して進むもの」
だと考えています。
例えば、強進行はルート音落ち着く方向に常に向かい続けるため進行として成立しますし、
逆に弱進行は落ち着く方向とは逆に向かってしまうため少々進行としては弱いものになっていると言えます。
また、ルート音が隣同士だとすんなり進行としては流れるようになってくれたりします。
この「ルート音の動き」はここまでの話でも見た通りかなり進行の本質を担うものになるのですが、これ以外にも流れを押し進める方法があります

それが、「濁して解消(解決)する」というサイクルです。
よく「解決する」と呼ばれるのはこれです。
例えば、I | IIm7 | V7 | I を考えます。
この進行は II -> V -> I と強進行を連続で用いて進むものになっています(よく「ツー・ファイブ・ワン」と呼ばれたりたりします)。
ここの V7 -> I に着目すると、V7にはトライトーンが含まれていて濁っているのに対し、Iは濁りが少なく、V7で感じられた不協和が解消されるように聞こえると思います。
これが「解決」の感覚です。

この解決をするために、わざと濁したりすることがあります。その時に使えるのが「アヴォイドノート」や「トライトーン」で、実際にaugやdim、セブンスなどが使えます。

裏コード

次はコードの概念です。
裏コード」とは、もともとのコードと機能がほぼ同じなので置き換えても問題ないとされるコードです。
作り方は、もとを同じ形のままルート音をトライトーンに平行移動させることによって得られます。

例えば、G7の裏コードはDb7ですし、Cの裏コードはF#です。

これは、「メロディとの調和に問題なければ置き換えても大丈夫」なものなので、コード進行の選択肢の増加に直結するものだと思います。

クリシェ

ここから実際に使える動きをまとめていきます。
クリシェ」とは、コードの一部、または全部が半音ずつ移動していくコード進行です。
このコード進行は、隣同士のコードが滑らかにつながるため、スケール外の音をさらっと馴染ませるのに向いた進行だと思います。
ただ、一部ならまだしも全部を動かしてしまうとメロディの作成が困難になる場合があるので、メロディの事も考えて扱うべきだとも思います。

実は、ツー・ファイブ・ワンのV7を裏コードにすると、 IIm7 | IIb7 | I となり、ベースの部分でクリシェになるためこれもまた強い進行になったりします。

コード進行の奇の衒い方

はい、ここまでで「半音で動く」、「強進行」、「弱進行」、「濁して解決する」というアプローチを紹介してきました。
しかしこれだけではまだ自由に動けると言い切れるわけではありません。

ここで、もうひとつのアプローチ「Iからの進行」に目を向けます。

一見これは「そのスケールの基準は無敵」というものにみえるかもしれません。
しかし、ここで考えてみて下さい。
もし I から飛んだ先のコードを 「I と見做す」ことが出来たら……?

はい、つまり I と見做す音がしっかり I であると聞かせる事さえできれば、その音からどのコードにでも飛べるという事になります。
I として聞かせる」ことには、メロディとの協力も必須になります。
その音が I になるという事は、 I の位置、つまり〇〇メジャー/マイナースケールの○○の部分が変わるという事に他なりません。
このようにスケールの〇〇の部分(主音と呼ぶ)が変わること転調などと言ったりします。

こうやって「転調」という言葉を聞いてしまうと一見難しそうに見えますが、今言ったように I に見做す事さえできればそれは転調になるので実はやることは結構シンプルだったりします。

では、次に「I をどうやって I と見做すことが出来るようにするか」を考えます。
この思考はいわば、「そのスケールをどうやったらそのスケールのように聞かせられるか」という疑問に置き換えられます。
これは1度、最初の日にしっかりお伝えしたはずです。
音の並びが重要である」のです。

この音の並びを強調させやすいのがメロディであり、ここがスケールを守っていればコード進行はいくら暴れてもまとまりがある曲になりやすいと言えます。

それでは、メロディの破綻のしない方法をここから書いていきます。

メロディのルール

もし、コード進行を暴れさせたい人の場合、ここは守るべきものであると言えます。
それでは早速話していきましょう

スケール内の安定音/不安定音

実は、スケール内の音には「安定する音」と「安定しない(不安定な)音」が存在しています。
具体的には、

安定する音: I, III(bIII), V番目の音
不安定な音: II, IV, VI(bVI), VII(bVII)番目の音

という感じに分けられます。
この区分は重要で、これの扱いによっていいメロディかどうかも決まりますし、ここの音の扱い、主軸の意識明るい/暗いの雰囲気までも操れるようになります。

この安定/不安定を意識した基本的なルールは以下のものになります。

  • メロディの開始は基本安定音成るべく I が好ましい
  • メロディの動きは
    隣同士に動く
    安定音から安定音に飛ぶ
    *不安定->不安定ときたときは最後にその2音の間の安定音を置く
    不安定音からは跳躍しない
  • 成るべく I を多めに入れるとスケールを強調しやすい
  • マイナースケールにおいては、終わりは成るべく I で
  • マイナースケールの終わりが bIII の場合は明るめに終わる
  • メロディの終わりは安定音が好ましい
  • そのときのコードのルート音から6つあけた上の音でメロディを終えない(Fコードに対してCなど)

これらを守ればまず破綻はしないと思われます。
ただ、これが必ず守られなければならないという訳でもないため、注意が必要です。最後はあなたの「良い」と思う選択で決めましょう。

また、スケールが移り変わる時はその瞬間に2つのスケール上でこのルールを守ったメロディが書ければ自然な転調が可能になります。

宣伝兼例紹介

ここまで読んでいただきありがとうございました。
質問なども全然受け付けておりますので何か気になることがありましたら是非書いてみて下さい。

筆者の作った最新の曲

宣伝にはなりますがこちらは僕が手掛けた曲です。
今回書いていった内容を存分に埋め込んで作った作品ですので、是非参考にしてみて下さい。

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