数学的イラスト論
さて、皆様こんにちは「AO」です。
本日は2D課が大変少ない現状を嘆いて、理系の人が絵を描くために「いかにイラストを描くのが数学的か」についてお話ししましょう。きっとこれを読み終わるころ絵を描いたことない理系の人はAm〇zonを開いてペンタブを購入してるに違いない。
はじめに
イラストを作成するうえでまず、以下の種類があることを理解してほしい
- 自分の画風を貫いたイラスト(独立的イラスト)
- 他者を尊重したイラスト(依存的イラスト)
ここでいう他者を尊重するとは所謂二次創作のことである。もちろん二次創作においても個々の独創性や特徴的な画風が含まれるが、「正解の所在」という点でこれらは明らかに異なる。二次創作では元の作品という正解があるのだ。目の場所、髪の色、顎から目尻までのラインの角度や鼻の高さなど、多くのパーツの場所に元の作品の特徴を引き継がないければ、それは二次創作とは言えない。よって作品を理想に近づける(最適化)には元の作品を正解として意識する必要がある。このように依存的イラストは「ある程度似せる」ということが重要なのだ。
では独立的イラストはどうだろうか。作品を0から作成する場合であってもイラスト学習で得た何かしらの影響は表出されている。これはある意味では過去見たイラストに依存しているように思えるが、依存的イラストとは異なり部分的にそれらの特徴を抽出することができないということで異なる。例えば目一つについてもいえる。目尻の高さからまつ毛の有無、瞳孔の形など目は様々特徴が出るが、独立的イラストはこれらの特徴を過去の学習から最適化する。これは場所によって異なる学習の影響が必然的に表出され、元の作品という単独の正解がある状態とは異なる。よって何かしら各自の中に正解を持ち合わせ、それを元に最適化を行うのだ。
イラストにおける数学的な考え
イラストは前節で説明したように2種に分かれ、どちらも正解を持ち合わせており、それらにできるだけ近づけることが目的であった。しかし、正解の所在が異なることによってそれらに要求されることは大きく異なり、それらを求めるには数学的考えが必要である。
以降ではどうして数学的思考が必要かマジででたらめに説明する。
大前提としてイラストは「連続する線の集合」である。ここで線を「連続する点の集合」と解釈すると、点w_tと点w_(t+1)の間には以下の漸化式が成り立つ
・初期位置:w_0=(x,y)初期座標
・中間位置:w_(t+1)=w_t+F(t+1))
関数F()は手の運動を意味している。上記の式より、線とは直前の手の角度に依存しているといえる。これは自明であり、手の運動は方向を決定したときの動作から変化する。よって手の動作によって線というのは変化していくといえる。よって線を描くとは手の動作を整えることである。このときw_(t+1)は
w_(t+1)=(((・・・(w_0+F(1)+・・・)+(F(t-1)))+F(t)))
より、前動作がw_(t+1)に与える影響が大きいことがわかる。このことより
w_t=(1/2){w_(t+1)+w_(t-1)+F((t))-F((t+1))}
w_t=(1/2){(動作前後の座標の合計)-(手の変化予定)}
このとき動作前後の座標合計は定数である。よって正解の場所をXであらわし、その誤差をDとすると
X_t-w_t=D_t
このDを最小化していくことを考える。Dを最小にするにはw_tを最適化する必要がある。ラグランジュの未定乗数法より
L(x,y,λ)=D(x,y)-λ(w_(t))
δL/δx=(X_t-w_(t)-λ(w(t))) /δx =0
δL/δy = (X_t-w_(t)-λ(w(t))) /δy=0
δL/δλ =w_(t)=0
w_t=(1/2){(動作前後の座標の合計)-(手の変化予定)} より、誤差を最小にするには手の変化予定を微分して最小にすればよい。
各点の誤差を最小しつつ点を打っていくことが最適化であるといえ、数学的な思考がお絵描きにも必要であることが分かった。
(ちょっとわかんなくなってきた。俺は何をしているんだ。)
最適化
前節では数学的な考え方の導入についてで説明した。ここから正解の範囲とそれに伴う微分の説明をする。
正解の範囲とは線は幅や位置という要素を持つため、正解となる許容というものがある。例えば目の高さや大きさは左右でそろえることが基本だが、これらには多少の差があってもまあ許されるのだ。以下の画像はその例である。
「基本形」をもとにして「右目だけを大きくした場合」「目の幅を変更した場合」の例が上がっている。これらは基本形とは異なる印象を受けるが、一瞥しただけでは絵そのものにそこまでの差を感じないと思われる。これが許容であり、正解の範囲である。
では独立的イラストと依存的イラストの間ではそれぞれどのような範囲の差があるのだろうか。
まず、依存的イラストは絵を描く以前から各部位に適切な場所が制定されている。そのため、正解となりえる線の範囲は狭い。例えば「基本形」をもとに二次創作を作成したとして、「右側の目を大きくした例」「目の幅を変化させた例」はそれぞれ正解の範囲に収まっているとは言いがたい。これは目の適当な位置というのが「基本形」を元に推定され、それと比較することによって生じる違和感によるものである。よってこの違和感を排除、つまり最適化することが依存的イラストの目的といえる。これは最初から最適解が求まっているに等しく、正解の場所の特定及びそれに伴う微分も容易であるといえる。ただし依存的イラストの正解の場所は元の画像を基準にした計測をしたものであり、測定をするために学習をする必要がある。
では独立的イラストにおける微分とはどのようなことを言うのだろうか。実は正解の場所を求める理由が異なるのだ。依存的イラストは所謂「正解の場所によせて違和感を排除するための微分」であるのに対し、独立的イラストは「正解の場所を特定して違和感を排除するための微分」である。
例えば絵描き界隈では左右の目の幅には宗派があり、個々人の趣味で幅が異なる(例:AOは目0.8~1.0個分の幅)。よってこの方法は個々の感性に依存しているため、各個人にそれぞれ異なる解を持ち合わせることになる。つまり「基本形」の他に先ほどは不正解の「右側の目を大きくした例」「目の幅を変化させた例」も正解であるということもでき、正解の幅が大きく広がる。これは依存的イラストとは異なり、段階的に正解が見えてくるため、比較する対象が自己の経験に依存するからである。具体的には右目を描いた後、左目を描くときとすると、左目は自身の趣向を元に最適な場所がおぼろげに浮かび上がってくるような感じである。独立的イラストはこの場所の特定を目的として微分し、最適解を求めるために繰り返し、それに近づけていくのだ。まさしく最適化である。(下図に微分の3段階を順に表示)
微分のための正解の場所への考え方は違えど、このように微分の考えを用いることによってイラスト制作は成り立っていることが分かった。
逆に言えば正解の場所がはっきりと分かり、一発で線が描ければ微分なんてしなくていいことになる。WOWおめでとう。これで君もお絵描きマスターだ!
うん、まぁしかし、これさえできれば苦労しない。これが最初からできる能力が所謂”才能”であり、最初からできる人を”天才”というのだ。悲しき慣れの果ての諸君よ、残念ながら私たちはそんな器用でない。なんども作画をし、積み重ねた努力によって微分の回数を押えていくしかないのだ。
大公開!!AO的な正解の場所
以上のことより、正解の場所へ微分することが大切であることが分かった。依存的イラストは元の絵があるため、比較的簡単にできる一方独立的イラストは個々人で正解を持っていないといけない。逆に言えば正解の場所が同じときイラストは似た特徴を持つようになっていく。よってここでは私の数年分の学習データから最適な場所を紹介しようと思う(下書きやモデル図などの話は省略)。なおほとんどが文字化することのできない視覚情報を元に描いているため、文字化できるもののみ羅列する。
- 目の幅:目0.8~1.0個分
- 黒目:(楕円の場合)下瞼からまつ毛までの範囲でできるだけ大きく範囲を取る
(円の場合)視点方向に対して中心に点を打った後下瞼に少しかかるくらいの範囲が適当
(点目の場合)動向を描かないでいいので視点方向に点を打った後適度な円をそれを中心に描く
(グル目)点目と同様にして点を中心に描画 - 白目:基本的には描画することはしなく、色で表現する。
- 目の高さ;顎先からつむじまでを縦方向に4等分にしたときの中心線を基準に描く具体的には
中心線より下:子供的or女性風(若くなります)
中心線より上:大人的or男性風 - 頬の角度:目の高さに依存。
中心線より下:頬のふくらみ箇所が目0.5~0.7個分のところに来るように調整、子供の場合は直下に調整する
中心線より上:頬のふくらみを抑え顎までのカーブをシャープ寄りにする。 - 頬の線と目の隙間:具体的な指標はないが目の線とかぶる場合は目を優先して描く。その場合目の下瞼に向かって少し入り込むようなカーブを描く。
- 耳の高さ:目尻の先水平方向
- 顎先から耳へのライン:耳の高さが確定した場合。顎先からの耳にかけたラインを再度調整する。耳タブとラインかぶってしまっている場合は耳か顎ラインを適度な間隔で開ける必要がある。
- 手の大きさは顔全体の大きさに対して0.9~1.1である。(小さく描いても可愛い(Reゼ〇とか))
- 腕の長さは広げたときに真長程度になるようにする
- 足の長さは曲げたときにもも側が少し長くなるように調整
- というか模型図描け(すべて解決)
初心者がするべきこと
独立的イラストはある程度の学習とその情報から正解の場所を求める。よって今までイラストの作成をしたことがない場合は圧倒的な情報不足が考えられる。よってまずは依存的イラストを作成することをお勧めする。この世の天才たちが残した栄光を元に学習を積んで、あなたの独創的な世界に取り組む、そしてある程度の場所がわかってきたときに再度挑戦してほしい。きっと驚くほどペン先が進むだろう(圧)