「より良い演出」を思考する①
どうも皆さんこんにちは、RiG++団体長のMtです。
今回あちきがダラダラと書き連ねようと思うのはこんな内容。
良い演出ってどうやったらできるの?
皆さんはゲームを作ったり、映像を作ったり、はたまた3DCGで見栄えを良くしたり……そんな途方もない正解を探す旅を1度でもしたことがあれば、必ずこう思ったことがあるはずです。
「どうやったらより”良く”見えるんだ?」と。
無論様々な創作活動に触れてきたあちきですから、その気持ちも痛い程よく解りますし、あちき自身悩んで遠回りしてきた身でもあるので長い事触れてきた問でもあります。
そんなあちきが、数年間”見栄え”について悩んできて、その上で見つけた発展途上の備忘録としてツラツラと遺して置こうと思ったので、ここに記します。
これが、あなたの創る世界を彩る華の種にでもなってくれれば嬉しいです。
前座:基本の考え方
早速具体的な技法やらなんやらに入る、その前に。
演出に限らず創作活動に於いてどうしても必要になってくる、
「作品を1から作るときの考え方」から触れていこうと思います。
ここであなたに問います。あなたは、
「浮かんでくるものだけを素に
何かを形作ろうとしていませんか?」
「その方向性の世界観の“良い例”が体に染み付いていて、
尚且つそれを実際に生み出せる程に造形の深い人間」だけです。
非常に残酷な真実ですがネ。
しかし、創作者全員がそんな芸当をできなければいけない、なんてことはありません。
そもそもとして、そんな芸当ができるようになるには莫大なインプットや実際にアウトプットするという訓練が必須であり、最初から完璧で素晴らしい作品を生み出せる人間なんて殆どいないのです!あちきもできません。
これは小さな悲報であり、大きな朗報です。あちきらは沢山の練習や時間は必要不可欠ですが、正しい向きの努力さえできれば誰だって好きなモノを作れるようになるのです!これは頑張らない手はありません!
ここで誰しも思うでしょう、「正しい向きの努力って何?」と。ヒトは楽ができると判ればそうしたいものです。仕方がない。
そんな楽したがりのあなた達に言いましょう。
絶対的な正解はない。
はい、ないのです。だって十人十色、百人百様、あなたに合う正解はあなたの思うソレだけ。考えてみれば当たり前でしょう、全員にとっての大正解なんてあるわけないのです。問題文が違えば解答も違うでしょう、そういうものです。
ただ、殆どの人の60~70%程度にとって、少なくとも間違った方向ではないであろう答えがあるとあちきは考えます。
それが、
「人の真似をしよう」
これに尽きると思います。
「自分のモノを創りたいのに、人の真似じゃあダメでしょ」
こう言いたくなる方も居るでしょう。一つずつ説明していきます。
まず先程も述べた通り、「良いと思われやすい作品」は「あるジャンルや世界観を丁寧に踏襲できているもの」であり、それは勿論既に世の中に溢れています。
そしてそれらには共通の特徴があり、それらを取り入れるほうがより良い作品になりやすいのです。
個性を出し抜きするのはその後のお話です。つまり、自分の思うモノを「良い作品」として生み出すには、ここまでが前提ということになります。
逆に、ここまでできるようにならないと、個性の出し抜きのバランスが取れる訳が無いということでもあります。
良い作品には明確なリファレンスを
真似をするには、その大本が必要です。
これを、その作品を作るうえでのリファレンスとします。このリファレンスは複数あるべきです。そして、その複数のリファレンスからそれぞれ様々な要素の真似を行います。
例として、曲作りで考えてみましょう。
一つの曲を作る上で、リファレンスの曲を4~5曲用意します。そして、それぞれの要素を徹底的に真似します。音作りのリファレンスの場合はどの音がどういう質感で、どれくらいの音量バランスで鳴っているかを確認しながら同じように音を作り、展開のリファレンスの場合はどんな盛り上げ方・繋ぎ方で次の展開に向かっているかを確認しながら同じように展開を作り、雰囲気のリファレンスの場合はどんな音の重ね方で雰囲気を作っているかを確認しながら音を置いていきます。これくらいガッツリ、リファレンスを真似します。
ここまでして、試行錯誤することで「良い曲の形」が分かるようになってくるのです。
どんなに凄いと言われる人でもリファレンスは用意するそうです。そのため、最初はリファレンスの参考の仕方を学ぶことで「実際に形作る力」を養えるわけです。
本題:良い演出の例
さて、前座で散々リファレンスを真似するコトの大切さを説いてみた訳ですが、やはり手っ取り早く見栄えが良くなる技術も知りたくなるものでしょう。
お待たせ致しました、ここから良い演出の手法などを置いていこうと思います。
尚、注意点があります。それぞれの手法はあちきがよく見かける、良くなるなと感じた手法であり、それぞれにはそれにあった演出の目的や効果が存在します。
この目的や効果に合わない用い方だとどうしても微妙な演出になってしまう、ということがあります。しっかり目的を持って演出を選びましょう。
もし参考のゲームや映像があるのであれば、そちらを真似るほうが遥かに効果的になると思いますので、そのことを理解したうえで参考にして頂けたらと思います。
テキストのデザインとは
さて、まずは誰でも「重要」とわかるものから行きましょう。
テキストに関するデザインについてです。
とは言っても、テキストに関する情報は、沢山あります。フォントがどうだとか、色がどうだとか、大きさがどうだとか……
これについて悩んだことがある人、と訊けば結構な人が返事をしてくれるでしょう。
しかし、これらの情報に関しては良い情報が、無料で、沢山、インターネットに落ちています。
なんなら最近はAIなんてものも在りますので、そちらを見て頂ければと思います。
今回あちきが述べたい内容は、「演出におけるテキストのデザイン」なわけです。
ちょっとだけ、パワーポイントやらドキュメントやらと話が違うのです。
テキストサイズ
勿論、パワーポイントなど慣れ親しんだテキストデザインなんかと重なる部分があります。その一つがこの「テキストサイズ」です。
これに関しては割と直感的に理解して頂けると思います。
テキストのサイズは、大きければ大きいほど先に、しっかり見てもらえます。これは単純明快且つ重要なことです。
例えばゲームの中に出てくるテキストで、大きい順に並べてあげればそれだけで見てほしいものを優先的に読ませることが可能になります。ここまで視線誘導を簡単にできるツールは多くは存在しません。

こちらはRiG++コーディング課リーダーのにしちゃんの作品「Perfect Back Parker Rev!」の1シーンです。
この画像を見て頂ければ、まず最初に目に入ってくる要素として「今がWAVE何か」、
次にその下にある「制限時間」「基礎スコア」、のように大きさ順にテキストの情報が目に入ると思います。
これがテキストの最もわかりやすく、扱いやすく強力な武器になりえるサイズに関しての基本能力です。
これは勿論、ゲームのみの演出だけではなく映像を作る際にも言えます。
基本的な例として、テキストの特に読ませたい部分、MVでいうと歌詞を大きく、それ以外の演出で出てくる文字を小さく置いてあげるととても分かりやすいと思います。
こちらの楽曲は最近見つけて良いなと思ったものです。本楽曲の映像のサビの部分などは特にこの効果の印象を理解しやすいと思います。
特にテキストの漢字が強調されて読めると思います。
この映像に限らず、漢字を大きく、ひらがなを小さく表現するのはかなり使われる手法です。
http://chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://cspa.hiroshima-u.ac.jp/wp-content/uploads/2022/05/2017_44.pdf
こちらの論文によると、人間が文字を読む速度なんかにも影響していると考えられるそうです。
是非なるべく読ませたいものがあるときなんかに使ってみて下さい。
テキストの色
この内容に関しても、見て頂ければすぐに理解・実践できると思います。
テキストの色に関してのお話です。
まずはこれらの画像を見て下さい。


これらはどちらも同じ色の背景に別の色のテキストを載せた画像です。
この時点で明確だとは思いますが、右の画像より左の画像のほうがテキストが読みやすいですよね。
はい。
これだけのことです。
ふざけてなんかいません。これはかなり重要で、尚且つ扱いやすいものだと思いませんか?
例えば、特に目立たせたい部分に関してはこの技術を使って見えやすくする。逆にあまり目立ってほしくないものに関しては右の画像のように見えずらくする。そんな風にこちらも視線の誘導などに使えます。
では、問題です。こちらの差はなぜ生まれるのでしょうか?
全く同じ形で、全く同じ背景で、テキストの色だけ違う。
このテキストの色が問題になっているのは明らかです。それでは、これらに使われている色をデータで確認してみましょう。
ということで、カラーサークルを表示するソフトを作ってみました。こちらで確認しましょう。
まずは背景の色です。

こちらのカラーサークルの指し示す場所が大事になってきます。
ここで、二つのテキストの色を確認します。


こちらを確認すると一目瞭然だと思います。見やすい方は見えにくい方に比べてカラーサークル上で色が離れているのが見て取れると思います。
これがこのテクニックを使うための秘訣の一つです。
「なんか文字が読みづらいな……」と思うとき、このような状況に陥ってしまっている場合が少なからずあるので、少し注意してもらえるといいかなと思います。
テキストは情報量の塊
さて、少し難しめの内容に入ります。画面上での情報量の話です。これはあまり固定化して纏められない内容になってきます。
なので、ここでは皆さんがなるべく理解できるようにあちきなりの情報量の解釈と扱いを遺そうと思います。
まず、情報量とは何かですが、「画面のある範囲においてどれだけ全貌を把握しづらいか」とここでは簡単に定義しようと思います。
この言葉だけでは多分パッと理解はできないと思うので、1枚の画像を用意しました。

とても簡単に用意した画像ではありますが、説明するならこれで十分です。
あなたは、この二つの線の集合体を見てきっと、左の線の集合体の方がどうなっているかすぐにわかったでしょう。
逆に、右の線の集合体はどうなっているのかよくわからない。
これが「情報量の差」であると考えます。これで何となくでも情報量について意識をしてもらえたら幸いです。
情報量の中身
この情報量はどう生まれているのでしょうか?何が原因で見やすく/見にくくなっているのでしょうか?
これを少しでも理解できれば、視線誘導や画面全体のバランスなどの理解に大きなアドバンテージを得ることになると思っています。
それでは、「情報量」を分解していきましょう。
そのオブジェクトの密度
まず最初に思い浮かぶであろうこととして、「密度」が挙げられます。どれだけ物体や線などが密集しているか……
これが大きな比重を持ち得そうなのは理解できると思います。

この画像は、直線の量のみを変えて密度のみを変化させたものです。
右のほうが明らかに目を引くのが感じられると思います。これが密度による視線誘導です。
そのオブジェクトの規則性
次は規則性に関してです。基本的に、規則性は無くなれば無くなるほど複雑になり、情報量が増えると考えられます。
以下に参考画像を用意しました。

この画像を見て頂ければ規則性に関する影響がある程度わかると思います。
というのも、これに関しては他と違い、大きな視線誘導は起こしません。むしろ密度が分散する分視線は規則性の大きい方に向くと思われます。
しかし、そんな規則性には大きな意味があります。それは、「認識を阻害する」こと、いわば流し見による情報の消化に対する暗号化です。
これが「複雑になる」という言葉の意味で、見た時の情報の消化の抵抗力が大きくなることを指します。
これは情報量にとって非常に大きい認識の障壁になります。密度を単に増やしても情報量は足し算程度の増加量ですが、規則性の低下はその情報量に掛け算、もしくは累乗で莫大な情報量にすることができるようなものです。
オブジェクト自体の意味量
そしてもう一つは、そのモノ自体が持つ意味の大きさについてです。
とても簡単な例として画像を用意します。

こちらも、規則性と近しいイメージですね。視線こそ誘導はしませんが、意味が生み出される分、右の四角を見る時間が増えます。
これも規則性と同じく、認識の阻害……とまではいかず、遅延程度に済むでしょう。
勿論、これにも規則性の乗算を乗せることも可能です。こちらの場合はただ密度がある図形よりも認識の遅延の効果は絶大です。
情報量と認識抵抗値
ここまでの話の中で、「情報量」という概念、その中身である「密度」「規則性」「意味量」という概念が主に出てきていましたが、もう一つ大きめに語った言葉があります。それが「認識」です。
ここで良い演出に関してのあちきの持論を述べようと思います。ずばり、良い演出とは、
「見ていて飽きず、疲れないで最後まで見れるもの」だと考えます。(勿論ただの持論であることは留意してください!)
あなたにこんな経験はありませんか?
映像を見ていて、ゴチャゴチャしすぎて何が起きているのか分からない、ピカピカしすぎて目が痛い、単調な動きばかりで変化がなく飽きてしまう、などなど。
あちきにとってはこれらの映像は少々受け入れがたいものに映ってしまいます。(無論素晴らしい作品の数々のうちの1つであることには変わりありませんが、あくまであちきの感性の問題です。)
ですがもし、これらの言葉に少なからず共感を得てくれた方ならこの先の話も今までの話もより分かっていただけると思います。
ここであちきは、これらの例のようにどこか見ていて疲れてしまう、見るのに抵抗が生まれてしまうものを思考するために、ある程度概念的に固めて「認識抵抗値」と名前を付けました。
これはその演出・映像がどれだけ「見たくなくなるか」をある程度要素を絞って相関を定めたものになります。
そして、映像の面白みを左右するのは
時間に対する情報量の変化量がどれだけ大きく、全体を通してどれだけ認識抵抗値が小さいかという指標が大部分を占めていると、今は考えております。また、情報量変化量は常に求められ、認識への負荷は時間経過で減少していくと思っています。
問題は、それぞれの要求キャパシティは人による、というものです。
$$
\begin{aligned}
I &:\ ( d + m) * r \\
R &:\ (d + m)^ r \\
F &:\ \delta I – aR
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
I &:\ \text{情報量} \ \\
R &:\ \text{認識抵抗値} \ \\
F &:\ \text{全体の面白さ} \ \\
d &:\ \text{密度} \ \\
m &:\ \text{意味量} \ \\
r &:\ \text{規則性} \ \\
\delta I &:\ \text{情報量変化量} \ \\
a &:\ \text{時間減衰変数} \
\end{aligned}
$$
お互いの関係性を式としてまとめてみると大体これくらいの認識への影響度なのでは、と個人的に解釈しております。
そしてこの式の通り、あちきたちは「全体の面白さ」を守るため、「時間的な情報量の変化」を大きくしながら「認識抵抗値」を下げる必要があるのかな、と考えています。
尚、この解釈は人間一人ひとりの感性に左右されるものなので、絶対というものではないです。もしあなたが正しいと感じるのであれば、自分の解釈の一つに取り入れてみるのも面白いと思います。音楽理論のちっちゃい版みたいなものです。
情報量とテキスト
さて、ここまであちき流に情報量とその細かい中身についてだらだらと纏めましたが、これらはテキストに対しても言える、とても関係が深いものになっています。順を追って説明します。
テキストと密度
テキストは基本中抜きの図形と比べて密度は大きく、塗りつぶされた図形に比べて小さいです。(勿論図形の縁の太さに影響もされますが……)

こちらに参考画像を用意しました。
…………思った以上にテキストはスタイリッシュですね……?
しかし、こう見てみるとずいぶんスタイリッシュなのに左から右に流し見ようとするとストッパーのように引っかかると思います。
テキストの視線の誘導に関しては最初の方で述べましたが、ここからは認識抵抗値に関連するお話になってきます。
テキストと意味
説明しやすいように、先にテキストに含まれる意味量について思考していきます。
と言ってもきっと、そこまで理解に苦労はしないと思います。
あなたたちは今、この文章を読んでいますよね。これにも認識抵抗値があると考えています。
ただ、このテキストそれぞれに含まれる意味量に関してはそこまで大きな変化はないとも考えています。
逆に、特に考えなければならない内容が、
テキストと規則性
こちらであると考えます。
以下に具体例を示します。
今日は良い天気だ。
窓から注がれる眩しい朝日に照らされて、目を覚ました。
今日は一日休みだから、朝食を食べたら溜まっていた洗濯物とゴミ出しをして、
そしたら少し買い物にでも出かけよう。
最近寒くなってきたから、冬服を買い揃えなければいけない。
そのあとはどうしようかなぁ。
当今、佳なる𠕹气と覚ゆ。
四邊𢒈の零す強烈な光彩を放つ陽光が、現へ惹く。
けふは終日勤めの無い故、breakfastを喰ろうたら処理待ちの衣類群と废棄物捨して、
然らば聊か暮らしを整える為に市へ往こう。
近来指先悴みつつ或るから、𰖋服ヲbUy調えに征く他無し。
其後、如何に处すべきか。
左右の文章でしっかり意味を理解して読みやすいと思う方を挙げて頂ければ、素直な大多数は左だと言うと思います。
これが、テキストの情報量と認識抵抗値における「意味の規則性」です。
これは、文章の形式やテキストの大きさ、漢字の分かりやすさや文章の意味などに規則がどれだけあるかで文章の読みやすさが大きく変わる、つまり
「認知抵抗値が大きく変動する」要因になり得るのです。
勿論、この読みやすさ読みにくさに関しては経験や知識による個人差がかなり関わってきます。が、多少なりとも関係していること自体は事実だと考えています。
このように、テキストにも「情報の変化量や認知抵抗値、面白み」が深く関わってきていることが分かるかなと思います。
この辺りの変化をバランスよく扱えるようになれれば、飽きず疲れずな映像になるのでは、と考察しています。
最後に
このままだと山のような量になるので、後日に②、③を上げさせて頂く予定です。
もしこのページの内容に興味を持って頂ける熱心な勉学者がいらしたら、是非次回以降の内容もご確認ください!
次のページは後程貼らせて頂きます。
それでは、良い創作ライフを~👀

