「より良い演出」を思考する③
どうも皆さんこんにちは、RiG++団体長のMtです。本記事は「より良い演出」を思考する②の続きとなっております。
「より良い演出」を思考する①からずっと続いた内容になっていますので、しっかり見たい方は一番初めから見ることをオススメします。
今回あちきがダラダラと零してゆく内容はこんな感じ。
と言っても今回はもう殆ど話すことは残っていません。
目次
良い演出の例 – 更に続き
前置きはもういいでしょうか。
これらの言葉は全て、一人の人間の備忘録に過ぎないので過信は禁物です。
最終的にはあなたなりの作品の創り方を手に入れる必要があります。
あちきにとってはこの方法が身に合った、というだけなのです。
カメラワークの彼是
この見出しを見て「やっとか」と思ったのではないでしょうか?
それくらい「映像・演出」と言えば「カメラワーク」という切っても切れない結びつきがあるものです。最初はこれを始めにする予定でした。勿論これを今持ってきたことにも理由があります。
それは、今までの知識が前提、元になって表現がなされるからです。
様々な前提がある分、最初に持ってきてしまうと理解しにくい部分が出てきそうだったので、満を持して今書いています。
二次元的か三次元的か
カメラワークも他の演出や手法同様、目的に合わせて選び取る必要があります。
その目的の中で一番上にくるであろう分岐点が、2D的にするか3D的にするかです。
これは殆どの方にとって理解しやすいのではないでしょうか?
ここの目的がちぐはぐになってしまう場合、演出として大きな違和感を生むものになりかねません。
これは前回散々語った「認識抵抗値」と認知のシステムと通ずるもので、ヒトが無意識に「こうであるだろう」と思っているものに対してズレた演出を入れてしまうと、予測していたものから離れたものに捉えられてしまい、その結果見疲れを引き起こしてしまうという解釈です。同じように、頭の中で「今は2Dの映像を見ているんだ」と考えている中で突拍子もなく3Dのカメラワークなどを使ってしまうと、認識の中の予測と大きな差ができてしまい、結果的に目的に無い注目や記憶の残り方をしてしまったり、ゲームでは没入感を減らしたりといったデメリットになってしまう可能性があります。
そのため特別意図が存在しない場合であれば、2Dには2Dに合った、3Dには3Dに合った技法を用いてあげるべきです。
研究との関連が気になる場合は以下の研究を確認してみて下さい。
- Effect of Pictorial Depth Cues, Binocular Disparity Cues and Motion Parallax Depth Cues on Lightness Perception in Three-Dimensional Virtual Scenes
- Effects of disparity–perspective cue conflict on depth contrast
- Vergence–accommodation conflicts hinder visual performance and cause visual fatigue
- Instability of the perceived world while watching 3D stereoscopic imagery: A likely source of motion sickness symptoms
- Methods for Reducing Visual Discomfort in Stereoscopic 3D: A Review
- A Computational Model for Perception of Stereoscopic Window Violations
- Correcting geometric distortions in stereoscopic 3D imaging
2Dでのカメラワーク
それでは、まずは2D演出上のカメラワークについて述べていこうと思います。
2Dのカメラワークのポイントは、「2Dでも空間を意識」することです。
空間を意識、という言葉に対して聞き覚えがある方は、マジでしっかり読んでいると思います。
前回の記事の中で格子背景を説明した際、
背景にオブジェクトを並べることにより空間を演出し、1つのシーン上で描かれるものに見せることで絵全体でまとまりを作ることができます
と述べました。
実はこれ以外にも幾つか理由があります。
その中であちきが最も比重が重いと考えていることが、「人間は常に空間を見ているため、奥行き自体が情報量になる」という考察内容です。
具体例としては、「奥行き0=壁面、ポスター」というイメージです。
完全に壁だと面白みが生まれません。それに対して、奥行きがあるという状態は「1つの部屋を真横から見ている」様な状態であるといえます。1つの部屋の写真を端っこから撮ったものを想像して下さい。
この部屋の中では、物を前後に置いてあげる事ができます。
これは情報量の塊で、その上人間が3次元上に生きていることもあり、簡単に抵抗も少なく面白みの強い見栄えを作れます。
これが2Dのカメラワークとしての基本配置になります。
基本的にはこれが大事で、あまりカメラ自体を動かす事はあまり無く、中のオブジェクトの動きで魅せる事が殆どになってきます。

具体例として簡単に描きました。
2D画面は言わば、こんな感じで一つの部屋を横から眺めているような状況です。この中に居る丸やら三角やらみたいなオブジェクトが動いたり、画面に入ったり出たりをすることで演出として魅せる事ができます。
他の具体例では、1つのキャンバスを近くから見て、それが上下左右に動いているイメージです。

こちらも本当に簡単な例を載せます。
一番外側の四角がオブジェクトが実際に配置されている部分(いわゆるキャンバス)で、点線の四角は画像の通り見える範囲を示しています。
この画角自体がキャンバス上全体を動き回る感じです。
基本的に、2DのMV上ではこれらが同時に行われてシーンが構築されています。
今までの情報量やテキストなどを、この動きに合わせることで理論的に作ることができるとおもいます。
3Dでのカメラワーク
次は、3Dのカメラワークになります。
実は、基本的な考え方としては2Dと同じで、空間を意識するものになります。
が、2Dとの大きな違いは「2Dは部屋の端から見た風景」であり、「3Dは部屋のどこかしらから見た風景」という表現になると考えられます。つまり、2Dは一面を見るものであるのに対して、3Dは視聴者をその空間の中に居るように思わせるものであるのです。
これはかなり大きな違いです。2Dでは平面的に見えている範囲とその多少の拡張程度が意識されるのですが、
3Dではそれに留まらず空間の中の全方位を意識するものになるのです。この意識を持ってカメラを動かせば少なくとも、空間を空間として見せる事ができるようになってくると思います。

この演出するに当たって注意する必要があるのは、二次元データを配置して3D空間を作るときです。
3D空間に直接3Dオブジェクトを配置するような方式での制作であれば、元のオブジェクトの大きさの寸法さえ合っていればどんな配置にしてもある程度の説得力が生まれます。しかし、2Dオブジェクトの場合では遠近感を誤ってオブジェクトやデータを配置してしまう可能性があり、その結果空間としての認識ができなくなり、気持ち悪さなどにつながってしまいます。
解決策としては「パース」や「消失点」を意識したり、実際の写真などを参考にすると構図を作りやすいです。
特別な意図と次元の架け橋
最初に、「次元を意識した演出にしないと意図が曖昧になる」と言いましたが、この演出自体効果的に用いることもできて、
その場合の演出の区切りや流れのバランスで、「単純な2D/3Dのみの演出よりも多彩で色濃いものになる」という難易度に見合った莫大なメリットが得られます。
ただ、ここまで読んだ方ならある程度解ると思うのですが
この区切りや流れの操作は前回の記事で触れていて、今回の場合も同じように調整可能であるということになります。
情報量を用いた「視線誘導」
ここまで幾つもの技法手法理論を語ってきましたが、それでも尚完璧に問題がない作品を作るのは至難の業です。どうしてもどこかしらに、理論的にか手法的、もしくは技術不足や見る人の演出に対する知識不足や慣れ不足など、多岐に渡る理由でほぼ必ずどこかしらが破綻してしまうものです。
ここで本備忘録最後の技術です。「視線誘導」について語ります。
視線誘導の重要性
視線誘導がなぜ重要かを語ると、「良いところを力強く、弱いところを隠して」という一言に尽きます。
これは本当に強い武器になります。考えて頂ければ分かると思いますが、例えば演出的に「微妙だな……」と思うところに意識が向いてしまうと、もし他が良いとしても全体的な評価として「微妙」が印象に残ってしまい、あまり良く取られないことが起こります。
これは本当に勿体ないです。折角時間を掛けて生み出したものが、ちょっとした弱いところだけで全体が弱い、みたいに見られる事が起こるのです。これはメンタル的にも時間効率的にも良くないです。
意図的な視線誘導
そこで必要になってくるのはこの技術です。
実はあちきはこのことに関して、既に語っています。
そうです、「情報量」がこれに強く関係します。
情報量のバランス、比重を「良いところ」に多くすればそれだけ作品を「良いもの」に見せることができるのです。
関連 : 作ったモノの一部を隠す勇気
これは最後のコラムのようなものになります。
ここまでの技術を適応する中で、「頑張って作った素材が隠れてしまう」とか、「製作時間に対して実際に見える時間が一瞬になってしまう」とか、創作の最中心苦しい瞬間に出会うことがあると思います。あちきもあります。
そんな時に持っていてほしい心持ちとしては、「裏に居ても作品を支えてくれる一部」であることです。
この心持ちはきっと、あなたのモチベーションとしても、作品の奥深さや隠し要素としてでも活かすことができるので是非自暴自棄にならずに頑張ってほしいです。
最後の最後に
3日に渡る膨大な継接ぎの言葉の山を読んで下さりありがとうございました。
ここまでしっかり読んで下さっている方はきっと、何かしらクリエイティブなことに惹かれている人が殆どでしょう。再三に渡りますが、この内容は全てあちきの足跡みたいなものです。これらに意味を見出そうが見出さまいがどちらでもいいものです。
それでも、何かしらに活かせると思って読んで下さっているのなら、
それは絶対に無駄にはならないのであなたなりの創作を見つけてください。
それでは、良い創作ライフを~👀

