立ち絵について

 こんにちは、2D課リーダーのHirohataです。現在はUnityRoomで絶賛公開中のゲーム『ティア・マテリアル』のデザインを担当させていただいています。忙しすぎてそれ以外の絵が全く描けていません。

 こちらのゲームでは主にキャラクターの立ち絵やミニキャラ、その他素材やアイコンを描いているのですが、その中で最も時間を費やしているのが立ち絵です。12月20日時点で8体のキャラクター立ち絵を描きました。

 たくさん立ち絵を描いているので、今回は皆さんに立ち絵の描き方や考え方などを、私の解釈で話していきたいと思います。参考程度に聞いていただけたら幸いです。

1. 立ち絵の役割

 アニメや漫画、ゲームを嗜んでいる皆さんは、少なからず立ち絵というものをご覧になったことがあると思います。

 『立ち絵』とは、キャラクターが立っている姿を描いたイラストのことで、主に人物紹介のページやストーリーシーンで見かけることかと思います。
 立ち絵の主な役割は、そのキャラクターの服装や身体的特徴などを一目で理解してもらうことにあります。「こんなキャラなんだ」と思わせるための絵だと私は考えています。また、ノベルゲームなどでは表情差分を用意することで簡単なアニメーションのように扱うこともあります。Live2Dの技術を用いて、さらにアニメーションを凝った立ち絵も存在します。

 例として次のイラストを見てみましょう。

『ティア・マテリアル』より「久寿米木みどり」

 皆さんはこの立ち絵を見て何を思いましたか?

 人は人間を見る際に、一番はじめに顔を見ると言われています。この行動は2次元のキャラでも同様に起こります。なので立ち絵でよく言われるのが、『最低限顔が整っていれば良い絵になる』といった言葉です。極論に近いですが、案外間違ってはいないと感じています。なので私はいつも顔だけは丁寧に描くようにしています(特に目)。

 さて、この立ち絵を見ると、様々な情報が詰まっていることが分かると思います。例を挙げてみると、
・眼鏡をかけている
・学生服を着ている
・左手に何か持っている
・比較的高身長である
・長髪である、色は茶色である
 といった感じでしょうか。ここまでは絵に描かれている直接的な要素を列挙しました。これらの情報から、皆さんはさらに想像していくと思います。例えば、「この子は静かなイメージがする」「なんだか賢そう」みたいに、絵にはそのような情報が直に描かれていなくても、関連して様々な感想を得ることができます。

 立ち絵以外のイラストでも重要ですが、このようにこのキャラがどういった魅力を持ち、どういった性格の子なのかを伝えることが、立ち絵のもっともも重要な役割の一つです。立ち絵があればそれ以降同じキャラクターが登場しても、どういった情景なのかを容易に想像できるといったメリットもあります。

2. 立ち絵ができるまで

 立ち絵の役割について理解していただいたところで、では実際に立ち絵を描くにあたって、どのようなことに気を付ければよいかを考えてみましょう。先ほども申した通り、立ち絵は見る人にそのキャラの魅力や性格を伝えるイラストであるため、これらが上手く伝わる絵でなければなりません。そのため立ち絵を描く前に、そのキャラの設定を整理する必要があります。

 私の例を詳しく説明していきます。私はまずそのキャラの立場や役割を文字の情報で整理した後に、それに合うキャラクターはどのような性格かを考えます。その次にその性格に合いそうな見た目を考えていきます。そこから簡単なラフを描いていきます。

ラフ1

 ラフ1は、最初のラフのイラストです。顔も描かれておらず、ただただどのようなポーズにしようかと考えていた感じです。

 お分かりのように、実際に完成した立ち絵とはポーズが異なりますね。つまりこのラフのポーズはボツになったというわけですが、『髪の毛が長い』といった要素はそのまま使われます。

 私はいつも絵を描く際、ラフを2、3枚描いた後に下書きを描き、そして線画を描くといった工程でデザインしています。そのため時間はかかるのですが、こうすることでよりよいデザインが出来上がるというメリットがあります。自分が納得するまで絵を描き直していくことが大事だと思っています。たまに挫折したりしますが……。

さてここからはダイジェストでラフ、下書き、線画をお見せします。右から順にラフ、下書き、線画となっています。

 真ん中の下書きではかなりキャラの方向性が決まりました。そして髪形などの変更を加えて線画が完成しました。

 どんな絵でもいえることですが、絵を描くためには下書きが必須です。下書きなしに絵が描ける人は滅多にいません。下書きを描いたらダメなことなんて一切ないので、満足できるまで下書きを描きましょう。

 また、先ほども言った通り人は顔を真っ先に見るので、顔の線画は十分注意して描き上げましょう。それに加えて、色の統一性も重要になってきます。配色を意識することが重要になってくるのですが、ここで話すと長くなるので割愛します。簡単に言うと、色には相性があるのでその特色を理解して絵に塗っていくことを意識しましょう。

3. 立ち絵は嫌われ者

 さてここまで立ち絵の重要性や描く際の大変さを伝えてきました。しかし、ここで衝撃的な事実を言いましょう。

 立ち絵は、一般的に『上手くない絵』として見られます。

 え?なんで?……と思った方も多いでしょう。なぜこのような考えが一般的だと言えるのか、それは立ち絵特有の性質が影響しています。

 立ち絵はキャラクターの全身が描かれるので、キャラの顔、手、胸元、下半身、服装すべてが強調されがちになります。これはキャラクターの特徴を伝えるという立ち絵の役割に則ったものなので、これ自体が悪いわけではありません。しかしながらこれによって、見る人はどこを見たらいいのか一瞬迷ってしまいます。そのためすぐに立ち絵を評価しずらいという弊害が生まれてしまうのです。更に立ち絵を隅々まで見たときに違和感を感じる人も多いです。これは人間の構造上の些細な違和感などが集って変な絵に見えてしまうというものです。立ち絵のイラストがSNS上で「いいね」が付きにくいのはこのような要因が絡んでいる可能性があります。

 つまり立ち絵はかなり高度な絵なのだと思います。人間の構造を把握し、自然な服装の描き方、自然な明暗の描き方をすることが求められる。立ち絵は様々な知識を用いた難易度の高い絵なのです。そのため立ち絵はあまり好んで描く人は少ないように思います。立ち絵よりもキャラの魅力が伝わりやすい上半身の絵など、全身を描かずにキャラを描く場合がほとんどです。また、立ち絵の場合俯瞰やアオリといった技法も扱いにくので、さらに嫌われる傾向にあります。

 立ち絵は作品において大事なイラストなのですが、上手く描きにくい嫌われ者であるという性質を持っているのです。

まとめ

 さて、立ち絵についての私の考えを列挙していきました。立ち絵はイラストの中では特殊な部類に入るので、趣味で立ち絵を描くにはかなり努力が必要になります。

 しかし、そんな立ち絵を描き上げるとその分の感動が待っています。

「こんなに魅力的なキャラクターが描けた!」みたいに私もいつも嬉しくなります。

 そもそも立ち絵を描いている時点でとても立派だと思います。プロジェクトにせよ趣味にせよ、立ち絵を描くという経験は決して無駄にはなりません。

 以上、立ち絵の話でした。

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